そのうちのひとつ、寺社境内にある御嶽神社や榛名社といった小祠は(図7-1)、人々が定期的に参拝しに行く寺社の神様をここに遷したものである。江戸時代から関東平野に広がる村々には代参という習俗があった。それは、気の合った人たちで社寺参詣を目的とした講という団体を作り、その代表者(代参者)が遠くの寺社まで参拝してお札をいただいてくるというものである。代参者が帰村すると、村ではお日待(ひまち)という歓待の座が設けられ、そこで講員に御札が配られる。そのお札にはお参りする寺社によって様々なご利益があり、例えば作物成育にご利益ありとするお札ならば、農家の人々は畑にそれを立てておく。おもな参詣先は御嶽(みたけ)神社(東京都青梅市)、大山阿夫利(おおやまあふり)神社(神奈川県伊勢原市)、三峯(みつみね)神社(埼玉県秩父市)、榛名(はるな)神社(群馬県高崎市)などが著名で、おもに関東山地に鎮座する社寺である。講の名称は参詣先の山名をとって、御嶽講、大山講、三峯講、榛名講などと呼ばれている。
図7-1 御嶽神社 上水本町稲荷神社境内(2009.4.12) |
代参は多くの地域で今なお続けられており、春になれば代参の御札を街中で見かけることができる。この御札は勧請した小祠に供えられることもあるが、家の戸口、畑の境、村境、といったウチとソトとの境界にも立てられる。
以下、現在も続く小平の講について紹介していこう。