とはいえ、この町会にかぎらず、市域の多くでは、住民の加入率は五割余りほどである。下宿している学生や賃貸マンション住まいの住民は、ほとんど加入することはない。また、移住者のなかには、そうした近隣付き合いがわずらわしいために小平のマンションに移ってきた人もおり、町会に入っていても、順番でまわってくる班長を頼まれると、会を抜けるひともいるという。
ただ、平成七年の阪神淡路大震災を経験して小平に移り住んで来た人たちは、逆にそうした近隣のきずなを積極的に求め、また、東日本大震災の後も、加入者は微増したという。昭和四十三年に府中市で三億円強奪事件がおきた折、事件にかかわった車に小金井公園の土が付着していたということで、警察が小平近辺の調査をきびしく行った。その際、住民情報を把握、作成するために、六人以上の下宿者が住むアパートには、その管理人を通じて、間借り人に自治会への加入を勧めたことがあったという。
こうした新しい組織の自治組織の発展や消長には、内部での結束への意志以上に、それをとりまく様々な社会の動向が反映することが多いのかもしれない。また、こうした地域には、前述した農村部のような祝儀、不祝儀の折の固定した互助組織はない。葬儀は、昭和の終り頃までは自宅で取り行われることも多かったが、それ以降は斎場で行われることが多くなり、周辺の家も自治会も、それに気づかぬ場合もしばしばあるという。