都市のなかの農地

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 都市計画法にもとづいた区域区分では、「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」(同法第七条二)を市街化区域と呼ぶ。小平市は全域が市街化区域に指定されており、都市計画法の上では、市内にある農地もその全てが開発の対象として位置づけられる。
 一方で市街化区域内の農地は保全の対象にもなってきた。農地は緑地空間や防災空間、レクリエーション・交流の場として、都市における良好な生活環境を支える役割を担っており、また将来の公共施設用地の候補地でもあったからである。農地あるいは農業の役割について小平での例をいくつかあげてみると、畑の端や道沿いによく見かける農産物の直売所が、新しく移り住んできた人々と農家の交流の場になっており、人々が野菜作りを楽しむための市民菜園も市内に三か所、仲町、栄町、鈴木町に設置されている(平成二十四年四月時点)。また、小学生の農業体験学習を支援する小平市学童農園事業では、「農業体験学習を通じて児童の自然や環境への理解を進めるとともに、都市における農地の多面的な機能を通して都市農業への理解を深めること」(小平市学童農園事業実施要綱 平成十四年)がうたわれている。
 市街化区域内に存在する農地の開発と保全について、いずれの面が強調されるかは、地価の高騰といった時々の社会情勢にも左右されてきたのだが、現在まで残った農地は、農家の生産生活の基盤であると同時に、都市空間の一部として、戦後に新しく移り住んだ人々や行政など様々な立場から意味づけられ、また利用されていることになる。