平成十七年の全農地約二百三十八ヘクタールのうち、二割を占めているのが果樹である。小平ではブルーベリー、梨、ブドウ、栗、柿、梅などが育てられており、このうち梨はこの年の農業産出額で一位となっている。
昭和二十二年、二ヘクタールほどの畑を有していたある農家では、その約二十分の一にあたる一反ほどに梨の苗木七十五本を植えた。畑の一角から新しい作物が取り入れられ、作付が塗りかわってきた一例になろうか。さつまいもの間に植えたが、さつまいものほうが強いため、どうしても梨の木の伸びは悪かった。
「そんなに順調にはいかなかったですよね。だから、三、四年はだいたいおっぽっちゃったですよね。四、五年たったら成りだしたから、棚でも作んないとしょうがないなぁって、それで棚を作った。」
当初、剪定の加減がわからなかったため、多くの実を成らせていたが、これが梨の袋かけ作業の労賃にも影響したという。袋かけを始めた当初、一袋あたり一円でお願いしていたため、実の数量が労賃の支払額に直結したからである。現在は日当になっている。こうした栽培技術や雇用にともなう経験、また、ここでは触れていないが、道具・資材の選択、出荷先の確保といった経験をひとつひとつ重ねていくことで、梨を主体とした農業経営のありかたが模索されてきた。その過程で作付も変化している。この家は、所有地の一部を道路用地として提供することで農地を減らしているが、現在も四反ほど梨を作っている。梨を導入した当時、畑の多くは麦、陸稲、さつまいもの栽培に当てられていたが、現在、梨を植えていない畑では、契約栽培しているキャベツと、東京都の依託をうけた苗木が育てられている。野菜や植木の増加は、この家に限った動きではないのだが、主力である梨栽培との兼ね合いのなかで、梨以外の畑の全面に野菜を作ると手が回らなくなるため、苗木が選択されている点に特色がある。