畑の個性

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 次に、小平で栽培される農作物が前述のように移り変わってくる時の、個々の畑の様子を、二つの生産組合における昭和四十年の作付からみてみたい。
 表10-4は、「農業(作付)調査」(小平市経済課農産係)の調査票にもとづいて、小川町の生産組合のひとつ(以下「A」)と、大沼町の生産組合のひとつ(以下、「B」)の作付を示したものである。両組合ともに平均六人ほどの家族からなり、男女一人づつ計二名程度が農業に携わっている。平均耕地面積は小川町の生産組合Aが九十三アール、大沼町の生産組合Bが百十五アールであり、いずれも総耕地面積の二十五パーセント弱は果樹園である。このように経営の規模や労働力の構成には、両組合の間にそれほど大きな差は見られない。なお、Bの十七番は耕地面積がすべて放棄の項に上げられており、調査票の上では、農家としての営みが確認できないため、ここでの作付の集計からは除外した。
表10-4 昭和40年の各家の作付
組合A生産組合(小川町)
家番号123456789101112131415161718192021222324
経営類型123131222111111111111111
家族構成23441142651441443343423
24624542442134516422233
農業従事者110111111111112112211211
111111111111111112111211
経営面積(a)普通畑50843110130744836292070120241201507047144911868678955
樹園地611350131032510010252020925433220
放棄11055
家畜(頭、羽)
1225025
202010461010788
作付面積(a)ばれいしょ15613053526010151541010105351010
あずき61
なす
とまと1105
きゅうり14111481210
しろうり4
まくわうり
すいか543242034115610172823101010101
だいこん1015125820532070530451518603810153010
かぶ48241078125
ごぼう1715101014202025101310851071010
にんじん1111111
さといも176637451211821715
さつまいも13
たまねぎ1
ねぎ111412
白菜1111413341230.511100.81
小松菜51421
その他のつけ菜111
キャベツ31041155655
ほうれんそう1411410
うど(自宅)221510402525103810203020
うど(委託)
みつば312
レタス
花やさい4
ごま
らっかせい1
しいたけ
9312
苗木3010
植木
枝物
なし20140203020
もも
くり1010204015
ぶどう
うめ583
26101051032521010552072510205

組合B生産組合(大沼町)
家番号123456789101112131415161718192021
経営類型122111111121112231111
家族構成532334313432443214242
324432245333334242535
農業従事者31112211321111111222
10121111211123211111
経営面積(a)普通畑12243751310891916.9199164479016060253610211090105
樹園地5281819255572731010406985595
放棄1015455315
家畜(頭、羽)
111111221221
456105105105515730
作付面積(a)ばれいしょ102.55511051.515105101055
あずき1
なす10
とまと1515
きゅうり111020.512311111
しろうり
まくわうり1
すいか21253232521214
だいこん51555131053515101011105
かぶ521015
ごぼう1621.620151025153020520215101520
にんじん15101015311
さといも1051755105510510205251053
さつまいも
たまねぎ2
ねぎ83315510535112
白菜145151511033351101511
小松菜552123455
その他のつけ菜3
キャベツ10107105155
ほうれんそう5551550.5103515103108510
うど(自宅)13403051015
うど(委託)15
みつば75355535231
レタス1
花やさい2020
ごま1
らっかせい21
しいたけ*1*2
苗木3
植木3
枝物2
なし325108
もも15252
くり95357104050
ぶどう25
うめ10
52225522203101020585525
出典:「農業(作付)調査」(小平市経済課農産係)
*1  しいたけ300本
*2  しいたけ500本
*3  経営類型は、1は専業農家、2兼業農家(農業が主)、3兼業農家(農業以外が主)を示す

 栽培された作物の種類をみてみると、両組合ともに七割以上の家で「ばれいしょ」「さといも」「すいか」「だいこん」「ごぼう」「白菜」が作られている。一方「しいたけ」「ごま」「レタス」「まくわうり」「なす」「ぶどう」「もも」「植木」「枝物」はBのみで作られている作物であり、結果として作物の種類はBのほうが多くなっている。これらの作物は同組合内のどの家でも作られているわけではない。数軒の家でのみ栽培される作物が九種類ほどあるという状況である。Bでのみ栽培されている作物とその栽培状況は、個々の家が思い思いに作付を試みる同組合の傾向を物語っていよう。なお、植木や果樹は、Bの三・四・五番のように特定の家で作られており、これらの家々で複数種が育てられている。
 作物の種類と関連して注目されるのが作付面積である。各作物の作付面積の合計をその作物を栽培している戸数で除して平均作付面積を求めてみると両地区の傾向の違いがうかがわれる(表10-5)。例えば「だいこん」の場合、Aの一軒当たり二十一・六アールという数字は、Bの六・四アールに対して三倍以上のひらきがある。逆に「白菜」ではBがAの二倍以上に上っている。
表10-5 平均作付面積の比較(作物別)
作物作付戸数(戸)平均作付面積(a)作物作付戸数(戸)平均作付面積(a)
ABABABAB
ばれいしょ201513.16.7ほうれんそう6173.56.2
あずき213.51.0うど(自宅)12622.118.8
なす010.010.0うど(委託)010.015.0
とまと335.37.0みつば3112.04.0
きゅうり10133.32.0レタス010.01.0
しろうり104.00.0花やさい124.020.0
まくわうり010.01.0ごま010.01.0
すいか22147.62.5らっかせい121.01.5
だいこん211721.66.4しいたけ02
かぶ1055.14.62052.50.0
ごぼう191710.314.2苗木2120.03.0
にんじん781.05.8植木010.03.0
さといも16205.46.9枝物010.02.0
さつまいも1013.00.0なし6421.811.5
たまねぎ111.02.0もも030.014.0
ねぎ6121.75.1くり5619.039.5
白菜18172.24.9ぶどう010.025.0
小松菜592.63.6うめ315.310.0
その他のつけ菜311.03.020168.610.8
キャベツ986.06.6
*作物名の表記は、原資料の表記にもとづく
*しいたけは本数で計上されているため面積は未記載
出典:「農業(作付)調査」(小平市経済課農産係)

 次に表10-4に上げた畑作物について、家ごとの作付面積をみてみると、基本的な傾向として両組合とも二十アール未満の作付が大半を占めている。一方、二十アール以上の作付は、Aでは「うど」「ごぼう」「だいこん」などを中心として二十六か所確認できるのに対し、Bでは十一か所にとどまっている(表10-6)。調査票に記載されている作付面積は、二期作が可能な作物は年間の延べ面積が記載されていると考えられる。そのため、調査票上の面積は、そのまま畑にしめた空間的な広さを意味するわけではないのだが、二十アール以上の作付数の違いからは、決まった作物をある程度まとまった形で栽培するAの傾向がうかがえる。
表10-6作付面積の分布
作付面積
(単位:a)
A生産組合(小川町)B生産組合(大沼町)
畑の数構成比畑の数構成比
50~30.0200.00
40~4920.0110.00
30~3970.0420.01
20~29140.0780.04
10~19440.23500.25
0~91250.641410.70
出典:「農業(作付)調査」(小平市経済課農産係)

 以上のように「農業(作付)調査」からは、作付の規模を指向するAと、作付の種類を指向するBの姿が捉えられようか。もっとも、各家ごとに農業経営のありかたは異なっており、ここでみた傾向が、それぞれの組合の全ての家に当てはまるわけではない。