被覆資材

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 畑の畝の表面を覆うフィルムやビニールハウスは、日常的にみかける資材のひとつである。塩化ビニールフィルムのほか様々な素材の被覆資材が開発されており、保温、雑草の抑制、防虫など製品ごとに機能や特長がある。以下では、里いも栽培を例として、被覆資材がどのように使われているかをみていく。なお資材名の表記は、製品名や材質名ではなく、使用者の呼称に従った。
 小平では、ドダレ・イシカワワセ・アカメイモなどの里いもが作られている。小平市西部のある家では、里いもを植付けると、その上にマルチ(プラスチック製などの農業用被覆資材 図10-13)をかけていった。六月頃、最初に太い芽が出てきて、その後、脇に小さい芽が出てくる。芽が出てくると、その位置を確かめ、上部を覆っているマルチを切って歩いた。天気が良い日に、マルチの内側の温度上昇にともなって芽が焼けてしまわないようにするためである。毎朝のように見て歩いたという。その後、小さい芽を手でかき取り、芽をひとつにしていった。マルチを切るところから芽かきまでの作業は、畑を覆ったマルチに穴を開けてから植付を行う他の家と比べると手間がかかる。しかしこの家では、里いもを植えてから他の作業を行うため、マルチの穴開けを後にまわすことで植付時の作業を省力化させていた。各家の作付と、それに応じて異なる農作業の内容と量をふまえて、同じマルチでも具体的な利用方法が変わってくる、そんな一例になるだろうか。この家では「何でも、うちによってやり方が違うと思います」と語られていた。

図10-13

東西にきられた畝にかけられたビニールマルチ。中央部が山になっているため北側と南側の列で生長に差が出てきたという 仲町(2010.5)


図10-14
オカアナから里いもを掘り出す 大沼町(2009.3)

 プラスチック製の被覆資材は、その保温性を活かして、栽培時だけでなく、収穫した里いもの保存・保管時にも使われている。里いもは収穫後、畑に掘られたオカアナ(図10-14)と呼ばれる穴(溝)に埋(い)けて保存され、四月なかばまで出荷された。ある家では、深さ八十センチほど、里いもを三株ずつ並べられるほどの幅のオカアナが掘られた。里いもは、切り株を下に向けて並べる。三~四段に積み、その上にムギガラ(小麦稈)を厚さ三センチほどに敷いたが、現在はかわりにビニールが使われている。その上に地面の高さまで土を盛る。冬になると、保温のために、上へさらに土を盛り、最上部にビニールやブルーシートが被(かぶ)せられた。オカアナの内部の温度が上がりすぎるといもの芽が動き出してしまうため、地面より高く盛った土は、春には取り除いた。