鳥獣害への対応

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 次に、畑をとりまく生き物に対応するための道具をみてみよう。
 畑の土を持ち上げてしまうモグラは、通り道にハサミと呼ぶ罠を仕掛けて捕っていたが、現在は少なくなったという。畑に入れる堆肥の量が減り、モグラのエサ(ミミズ)が減ったからかもしれないと、ある農家のご主人は推測されていた。ネズミは現在のほうが大きな個体がおり、ネットなどを物置の土間の上にそのまま置いておくと、巣を作って穴をあけてしまう。
 数を減らしたとされるモグラに対し、新しく姿を見かけるようになった動物もいる。電線の上を歩くというハクビシンもそのひとつである。ハクビシンやタヌキへの対策のため、電気柵を導入した家もある。コストはかかるが効果はあったと評価されている。新しい動物は、「変な動物が増えた」「カラフルな鳥」と言われるように、まずは見慣れない姿を通して、その存在が捉えられていった。
「カラフルな鳥」だけでなく、カラス、キジバト、ムクドリ、ヒヨドリ、シジュウカラといった鳥類への対応は現在も様々な形で行われている。ヒヨドリはキャベツをつついて穴をあけ、キジバトは畑に出た芽をつまんで歩く。キジバトは芽を餌としてついばんでいるのではなく、遊びでやっているのだという。空気銃の使用が許されていた頃には、キジバトを自家食用に猟る人もあったのだが、こうした人がいなくなってからは人に慣れ、近づいても逃げなくなった。
 鳥類への対応として現在よくみかけるのが畑にめぐらされたネットである。ネットは目の大きさに気が配られた。ある梨栽培農家では、シジュウカラが三十ミリの網をくぐって梨をつつくため、二十二ミリのものに換えている。
 カラスよけにはテグスや市販の模型が使われている。模型はカラスを模したもので、頭部を下に向けてつるすとカラスよけに、頭部を上に向けてつるし、生きているカラスにみせかけると、カラス以外の鳥よけにも効果があるとされる製品である。図10-19はこうした製品を参考に自作されたカラスよけである。

図10-19

市販品の鳥よけ(上H110×W493)と手製の鳥よけ(下H198×W495)。Hは最大高を、Wは最大幅を意味する。単位はミリ 仲町(2012.4)

 図10-20も鳥よけである。竹ひごに使わなくなった布切れを張り、これを畑に立てた二本の支柱の間に紐でつるすと(図10-21)、風を受けて上下に動く。形状をなぞりつつ、発泡スチロールを素材としたものも作られているが、竹ひごと古布を使ったもののほうが風を受けてよく動く。昭和八年生まれの男性は、この形の鳥よけを子どものころから目にしていたという。

図10-20
布製の鳥よけ(左H660×W668)と発泡スチロール製の鳥よけ(右H542×W556) 仲町(2012.4)



図10-21
畑につるされる鳥よけ 仲町(2010.5)