堆肥の変化

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 市販の道具や資材が新しく導入されてくる一方で、肥料やワラといった農業のための諸材の一部には自給生産が続けられているものもある。自給生産の基盤となる農地・ヤマ(雑木林)が減少し、また野菜や果樹が拡大することで作付も大きく変わるなか、どのような形で農業のための諸材の自給が続けられてきたのだろうか。
 まず、肥料についてみると、雑木林や屋敷林から堆肥の原料となる落葉を得ることが困難になって久しい。雑木林は畑や宅地、駐車場などへ転用され、また屋敷林も、倒木した場合の近隣住宅への影響や電線への影響など、理由はひとつではないが、その伐木が進んできた。このような状況のもと、果樹栽培を行う家では、栗や梨の枝葉が肥料に使われるようになっている。
 梨を栽培している小平市東北部のある家では、ここ十年ほど、剪定により落とした梨の枝をチッパー(粉砕機)にかけて粉砕し、堆肥に混ぜている。梨のチップを畑へ戻す場合、一年ほど寝かさないと梨に病気がでるが、これを堆肥に加えることで発酵が進む。この家が、チッパーを購入して以来の短期間の間にも機械の性能はあがり、現在販売されているチッパーではより細かく粉砕できるようになっている。チップはぬかるむ畑の道に敷かれることもあった。
 敷地や畑の端に積まれたチップの山にはカブトムシの幼虫が自然に入る。幼虫はマンジュウムシと呼ばれ、さつまいもを多く作っていた頃は、サツマドコ(苗床)の土のなかにも多くいた。チップ化された木くずだけでなく、畑の一角に積まれている落葉の中にもおり、葉を食べて育った個体のほうが、木くずを食べて育った個体よりも体が大きくなる。このマンジュウムシが出す糞はいい肥料になるという(図10-22)。また、成虫は農家の庭先で販売されることもあり、ある家ではそれが子どもの小遣い稼ぎになった。
図10-22
図10-22
マンジュウムシ。白丸の中はその糞 仲町(2012.4)

 畑に栗を植えている所では、その落葉が肥料に用いられる。図10-23は栗の落葉やイガを集めるための溝である。溝堀り用の機械で幅三十センチ、深さ三十センチほどに掘る。掘り上げられた土が溝の左右に盛られていくため、溝の両脇は地面よりも少し高くなる。十月頃に栗の収穫が終わった後、地表の栗のイガを畑の端へ寄せてからこの溝を掘った。その後、寄せていたイガを熊手を使って集め、溝へ入れておくと、残りの落葉は風に吹き寄せられて溝に自然と入った。入りきらなかった葉は風よけの茶の根元に寄った。
図10-23
図10-23
栗の樹間の溝。野菜くずが入れられている 仲町(2012.4)

 この溝には、例えばキャベツの外葉のような、野菜の出荷後に畑に残される葉茎などの野菜くずも入れられた。どの溝に何を入れるかは決められていないが、野菜畑に近いところの溝にはいろいろな種類の野菜くずが入った。
 肥料への利用が可能な梨や栗に対して、柿の葉は虫が付いているため、畑には入れられないという。