防除

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 防除の際の農薬の取り扱いにも、細やかに気が配られている。あるブドウ畑では、畑の脇に沿って伸びた道の通行人に配慮し、人がまだ少ない明方の三時に起床して防除を行っている。また作業時には、通行人があるかどうかを確認する担当も一人おいた。
 梨を栽培している別の家では、消毒を行う前に近隣へ挨拶にうかがっている。その上で、風が比較的に落ち着いている早朝に梨の防除を行った。ハダニを防除する場合、梨の木の上部まで薬を吹き上げることになる。噴霧器を使うと三メートルほど薬が飛ぶため、風の状況には常に注意が払われた。
 人通りに加えて車通りにも配慮し、日曜日以外は消毒作業を行わない家もある。ただし入梅の時期は、天気に恵まれないことも多く、作業日を選ぶことが難しくなる。そのため、天気をうかがいながら、先の家同様、車や人が通らない平日の早朝、朝四時から六時半頃までに作業を終えるようにしている。
 このように、周囲の人々への影響が抑えられる時間帯や曜日を選んで防除が行われるようになっているのだが、防除以外の農作業でも時間帯には気が配られている。例えば、近隣の人が勤めにでている平日は朝から畑仕事ができるが、休日は、自宅で休んでいる人の耳へ畑仕事の音が響かないように、朝からの作業を控えている農家もある。

図10-26
市民菜園の立看板(左)津田町(2009.3)、(右)栄町(2009.3)


 近隣への配慮は、この章の冒頭で述べたように農地の多様な利用が進んでいる現在、それを利用する一般の人々にも広くみられるものになった。例えば、市民菜園にかけられた立て札(図10-26)には、利用者の車の駐車にともなう道路通行への影響に対して注意書きが添えられている。利用者はこうした点に気配りしながら市民菜園を楽しむことになる。