防犯への対応

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 さて、現在目にすることのできる庭売り直売は、農作物の準備、販売する場所、販売の仕方などに様々な工夫が加えられている。人手を抑えられるという利点を持つ無人販売では、無人であるがゆえに品物や代金の盗難への対応が求められる。例えば集金箱に鍵を付けたり、チェーンにより固定したりすることで盗難にあいにくくしている。また、集金箱の代わりに樋を設置し、代金を建物内へ引き込む直売所や(図10-29)、防犯カメラを設置しているところもある。
図10-29
図10-29
代金は樋から室内へ(2009.9)

 こうして、設備上、様々な形で盗難対策が試みられているが、店先に人が立つことによる抑止力のほうが大きいため、可能な限り対面販売を行う直売所も少なくない。大沼町のある直売所では、単価が高いトウモロコシや栗などを販売する時期に限って対面販売を行った。この家の庭売り直売は、現主人が始めて三十五年ほどになるが、彼の母親が対面販売を受け持った。同じく大沼町の別の直売所でも、商品の金額が高くなる時、トウモロコシの販売時などは店先に人が出て売るという。
 いずれも、売物に合わせて対面販売と無人販売とを使い分けることで、人手が限られるなか防犯に対応した例である。ただ後者の直売所では、販売価格が他と異なるトウモロコシの場合、お釣りの受け渡しが発生することも、対面販売を行う理由として上げておられた。
 防犯には直売所の立地も関係してくる(図10-30・31)。青梅街道沿いの短冊型地割の一角、街道沿い(正面)と、後背農地の中ほどを横断する道沿い(裏)の二か所に直売所を設けた家がある。無人であることが多い裏の直売所では、並べた柿の三分の一が盗難にあう年もあった。そのため、現在、裏の直売所は閉められているが、なじみのお客は正面の直売所へ足を運んでくれるという。また、品物の二割を持っていかれた別の家でも、直売所の位置を道路の近くから屋敷地のより内側へ移動させている。道路沿いはお客の目に留まりやすく、集客力の点で利点がある一方で、畑仕事の現場から、あるいは位置関係によっては母屋からも目が届きにくくなる場所でもあった。

図10-30
さまざまな設置場所。畑の際に(2009.3)



図10-31
屋敷地内に設置。ブロック塀越しに歩道に面して(2010.12)