幕府直轄領とは

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小平市域の村々は、幕末のごく一時期を除き、一貫して幕府直轄領(以下幕領と略)であった。この幕領とは、どのような地域なのだろうか。近世において、日本中のあらゆる地域は、幕府の支配する幕領(御料・支配所(ごりょう・しはいじょ))のほか、大名の支配する藩領(領分)、旗本の支配する知行所(ちぎょうしょ)、寺社の支配する寺社領(朱印地・黒印地(しゅいんち・こくいんち))、朝廷の支配する禁裏御料(きんりごりょう)、公家の支配する公家領など、さまざまな領主が支配し、行政を行っていた。幕末期では、全国の生産力はおおよそ三〇〇〇万石程度であるが、このうち、幕領は四〇〇万石程度である。時代によって変動はあるが、幕領は全国土の約八分の一を占めていた。
 幕領は全国に分布し、全国七三か国のうち五〇か国に存在していた。なかでも幕領が最も多いのが江戸幕府の所在地の武蔵国で、武蔵国だけで五一万石以上の幕領があった。ただし、一方で武蔵国には江戸開府以来、幕府とかかわりの深い旗本や寺社などが江戸近郊の地域に領地を宛(あて)がわれ、また、遠国(おんごく)に領地のある大名も、在府賄領(ざいふまかないりょう)として飛び地(とびち)を宛がわれるなど、武蔵国の約六割は、幕府以外の領主が支配する地域でもあった。武蔵国は支配が複雑に入り組んだ「犬牙錯綜(けんがさくそう)」の地と呼ばれていたのである。