神社の境内地を考える

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一方、神社境内にも寺院同様にさまざまな石造物が存在している。境内入口に配置される手水鉢(ちょうずばち)や狛犬(こまいぬ)などが代表的である。
 手水鉢は、一般に社へ参詣する前に身を清浄にする施設として理解される。また社殿の前での鐘を鳴らす行為は、神前での行いとなり、「神」との交信をする行為とされる。但し、近世の人びとが「神」との交信を、どのように意識していたのかについては不分明であるが、その行為は現在まで引き継がれている。また現在、多くの神社に存在する「おみくじ」も本来は宗教者が時間を要して行う、宗教的な活動を簡略にしたものである。また小川村の神明宮に限らず、多くの神社の境内にはさまざまな祠(ほこら)や社が祀られていることも多くみられよう。このようなあり方は寺院の場合と同様に、その該当の神社のさまざまな宗教的機能として評される。
 このうち、小平市域では熊野宮の一本榎(いっぽんえのき)が注目されよう。武蔵野の象徴的な大木への信仰心が神社存立に不可分にかかわっていたことを示している。地域形成のシンボルとも評される一本榎が神社の成り立ちと不可分に存立している。人びとのさまざまな信仰心と境内地のあり方は密接に関係しており、現在、忘れられていることも、そこへ意識を向けることで、人びとの信仰心に迫れる。