小川村の抱屋敷の機能として重要な点が、江戸屋敷への材木や蔬菜(そさい)類の供給である。これまでも、抱屋敷として大切に守るべきものとして、屋敷畑に加えて竹木が書き上げられていたが、抱屋敷が果たすべき機能として「そた木伐(かり)取りそた木の分は残らず御屋敷へ送り木に仕り」や「年々炭真木垣根(すみまきかきね)竹木にても差し上げ候様いたし然るべくの趣」など、抱屋敷の竹やそだ木を炭や薪・用材として、江戸の屋敷主へ送っていたことが記されている(史料集一三、三七七頁)。このほか、抱屋敷の畑でとれた作物を江戸の屋敷主へ送っていた記録がある。抱屋敷の機能については断片的な情報しか残っていないため、すべての抱屋敷が同様の機能を果たしていたかどうかは不明だが、江戸の武家屋敷では、蔬菜類や炭薪など、日常生活物資を如何に入手するかが大きな課題であり、小川村に抱屋敷を所持した武家は、遠方ではあるものの、避災地としての地所をえることに加えて、日常生活物資をえる手段を有したことになる。