近世を知るために

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現在の私たちが、近世という時代を具体的に知るためには、残されてきた歴史史料、すなわち文字で書かれた史料を、おもな手がかりにする必要がある。村の史料=「村方文書(むらかたもんじょ)」は「地方文書(じかたもんじょ)」とも呼ばれる。
 現在の小平市域にも、多くの地方文書が残されている。現在までに市内で確認できているもののうち、小平市域の村に関係する最も古い文書は、小川村の明暦二年(一六五六)六月一六日の文書である。田無村(現西東京市)の下田孫右衛門ほか二名が、当時まだ「村山」(岸村、現武蔵村山市)に居住していた小川九郎兵衛あてに出したもので、箱根ヶ崎村(現瑞穂町)から田無村の間に新田をひらいたこと、これにともなって伝馬継ぎが行われるであろうことを記したものである(史料集一二、三頁)。本書の内容はおもに、現在まで残されてきた文書の検討によるものであるが、本節では、これらの文書がどのような経緯で、誰の手によって、どのように作成され、また蓄積されてきたのかについて、新田村の特徴的な文書のあり方にも触れながらみていこう。