さらに時代をくだり、小川村の弘化二年(一八四五)の宗門帳にみられる九一郎の印の印文は「義為」と読める。(図2-87③)これも小川家一一代目当主九一郎義為の実名「義為」を印文としたものであろう。また文字の置き方をみると、右から左へ文字が彫られている。このように個人の実名と特定でき、また右から左へ文字を彫った印が一般的となるのは、近世後期以降である。
図2-87 印に刻まれた実名
①:享保7年8月「乍恐口上書を以奉願上候」(史料集12、p.80)
②:安永8年3月「宗旨人別帳」(當麻家文書F-1-2)
③:弘化2年3月「当巳宗門人別帳」(小川家文書F-1-26)