百姓が使用した印は、各家である程度、相続されることが多かったようである。とくに当主が交替した直後は、前の当主が使用した印を引き続き使用していることが多い。大沼田新田の四五軒のうちでは、相続によって改印した事例の方が少なく、また一〇〇年近く同じ印を使用し続けていた家が五軒存在していた。
また当主の妻や後家は印を使用せず、爪印(つめいん)を据えることもあるが、後家の場合は当主と同様に印を使用することもあった。女性が当主になった直後は前の当主である夫や父親の印と同じ印を使用し、その後、印を替えた事例もみられる。これは印を使用するのが、家の「当主」であることに大きくかかわっていることを示している。