文政改革の趣旨

711 ~ 712 / 868ページ
小平市域にも、改革組合村の結成を示す、四か条の触と三九か条の議定書からなる請書が残されている(當麻家文書)。四か条の触では、現状を、無宿たちが徒党を組んで、長脇差や鎗鉄砲などを持ち歩き行いて村々で狼藉を働いており、さらに、百姓町人たちの中には、この無宿たちのようすを真似て、長脇差を帯びて同様の行為に及ぶ者まで現れており、地域の風紀が乱れてしまうことが問題だとしている。これを防ぐため、無宿人達を取り締まるとともに、村役人が中心となって村人への「読み聞かせ」「教諭」によって、地域の秩序を立て直そうというのが、文政改革の趣旨である。

図3-41 「文政改革御条目下書」
文政10年9月(當麻家文書)

 三九か条の議定書では具体的な対策が述べられる。条文は主に①組合村を結成すること、②幕府の法度や改革の趣旨を理解し、村人へ説諭すること、③無宿・悪党を見つけた場合の対処方法、④囚人の賄い費用の負担方法、⑤博奕・歌舞伎・相撲興行などの禁止、⑥浪人など身元不確かな者の宿泊や合力の禁止、⑦神事祭礼などの質素倹約、⑧公用寄合の質素化、村入用での酒食の禁止、⑨鷹場内での狩猟の禁止、⑩取締出役や町奉行所、火付盗賊改方、道案内などと称して宿泊や金銭をねだるものがいれば訴える、⑪寺院や村役人による博奕があれば訴える、⑫農業を嫌って遊び、親・親類・村役人の意見も聞かないような者でも勘当して帳外れにせず、心得違いを諭し、無宿にならないようにする、などである。
 人びとが農業よりも現金収入を求め、消費的な行動に流れてしまう社会状況や、そうした誘惑をもたらす無宿や浪人に対し、無宿・浪人の徘徊を取り締まって誘惑を断ち切るとともに、家族や親類など地域による粘り強い説得により、村人が無宿となってしまう構造そのものを改革しようとしたわけである。取り締まりと教諭の両面の強化と、それを実現するための改革組合村というルートの確立が、文政改革の眼目であった。