小平市域の村々はすべて幕府直轄領であったが、大政奉還・王政復古・戊辰戦争と政局が変わるなかでも、実際に地域を支配する代官は、変わることがなかった。小平市域を最後に支配した代官は、韮山代官の江川英武と、江戸廻り代官の松村長為だったが、二人とも、慶応四年三月(一八六八)に維新政府に恭順し、引き続き、地域の支配を命じられている(第一章第三節)。したがって、江川や松村の肩書きは変わるものの、年貢を払う先が変わるわけではなかった。時代の変化は、むしろ、それ以前から続く村人の戦争への動員や、慶応四年の官軍・旧徳川軍双方からのさまざまな役負担や献金などによって実感されたのであろう。
しかし、維新政府は、元幕府直轄領であった小平市域の村々に対し、あらたな政策理念の実現を強く求めていく。これまでの幕府代官支配のあり方からは考えられない為政者の対応に、小平市域の村々は直面することになるのである。