ここであらためて「はじめに」で設定した三つの視点で本編を見直してみよう。まず第一の視点、近世=「平和」についてである。現在の小平市域に人びとが定住する歴史は一七世紀中期にはじまるが、これは天下(国家)が統一され、江戸幕府の支配制度が確立しつつあった時期、すなわち徳川氏がもたらした「平和」が確立しつつあった時期でもあった。近世の「平和」の様相をこの地域で考えた場合、たとえば文字の普及や、文書社会のなかでの村のあり方を考えることができよう。幕府(代官所)と村は、多くの文書のやりとりを行いながら、支配関係を築いていった(第二章第二節・第九節)。享保期には、成熟しつつある社会のなかで、幕府によって新田開発政策が打ち出され、そして村や百姓らが実際に開発を企てるなど、幕府、村、百姓が共に新田の開発と安定化を目指したことにも「平和」が象徴されるであろう。