《村のすがた・百姓のすがた》

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 近世という時代に限らず、村のあり方、村に住む百姓のあり方をみることは、歴史のなかでも「地味」なもの、あまり興味を持てないものという印象を持つかもしれない。『小平市史』近世編では、市販の書籍や教科書などで名前をみることのない、特定の村、そこに住む一般の人びとにこだわって述べてきた部分も多い。彼らの動きは、政治や社会へ直接大きな変動をもたらすような、一見「派手」な歴史の動きとは少し異なると思うかもしれない。しかし、彼らはこの地域のために努力し、この地域を支え、また着実に動かしていた主体であった。しだいにそのすがたの多くがみえはじめてきたさまざまな人びとは、『小平市史』近現代編において、さらに具体的なすがたで語られるであろう。
 そして現在の小平市域にあった近世の七つの「村」は、それぞれが個性的なすがたをみせた。村の開発、村役人、年貢収納、信仰、文化交流、そのほかさまざまな点で個性を持っていたのである。江戸幕府が築いた支配体制のもとで、村々の様相は均質化、画一化する側面があったにせよ、近世の村はそれぞれ、そこにしかない固有性を持っていたといえる。そこに住む人びとの知恵や営みがいかなるものであったのか、それらがどのように受け継がれて、現在の「小平市」があるのか、この地に住んでいた、彼らの努力、そして「魅力」をここに刻んでおくことが市制五〇周年という一つの区切りを契機に編まれた、『小平市史』の役割であるともいえよう。
 二〇一一年三月一一日、未曽有の大震災を経験した私たちは、今後の時代に何を残していくべきなのかを考える必要もある。この地にしかない、固有の村、固有の人びと、固有の歴史に刻まれ、残されてきたものを掘り起こし、それを残していくことの重要性を考えていかなければならないだろう。