「開発」「改良」「福祉」の三つの特徴から小平の近現代の歴史のアウトラインを描くこと、小平の「くらし」の歴史の特徴を理解するためにいくつかの工夫をすること、これらはいずれも二〇〇八(平成二〇)年一〇月以降の編さん過程で考えてきたことです。
そうしたなかで、二〇一一年三月一一日に東日本大震災がおき、地震・津波による被害と原子力の災害がひろがりました。東日本大震災後、日本の戦後史と地域の歴史を振り返る機運がでてきているように思われます。歴史の振り返り方は、震災後の復興の方向性と大きくかかわっています。今後の産業復興を軸に考えるのか、被災地の人びとのくらしの再建を軸に考えるのか、どちらを選ぶのかで歴史の振り返り方も変わってきます。震災後の復興はもちろん二者択一でないのですが、震災から一年半が経過した現在(二〇一二年九月)、震災復興をめぐる議論は結局のところ二つの方向に収斂されているようにみえます。
小平市は、いうまでもなく東日本大震災で直接被害を受けた地域ではありませんが、東日本大震災後における歴史への問いは、小平市の近現代編にも無関係ではないように思えます。問われているのは小平市の近現代の歴史の振り返り方であり、そのことは東日本大震災後の歴史の見方にもかかわることなのです。
「開発」「改良」「福祉」の三つの特徴から近現代の歴史を描くことや、近現代編の各章に「くらしの仕組み」の節を入れる構想をそなえた小平の近現代編は、東日本大震災後の歴史の振り返り方とも重なるところがあるのではないかと考えています。震災復興にあたり、人びとの「くらし」の再建を軸に考えようとすれば、「くらし」の歴史を振り返る必要が出てくるからであり、「開発」以外の要因を歴史に探る必要がでてくるからです。東日本大震災後に求められている歴史の振り返り方も念頭におきながら、ぜひ小平の近現代編を読んでいただきたく思っています。