郡区町村編制法とともに府県会規則が制定されたが、町村会の規則は制定されなかった。そこで神奈川県では一八七九(明治一二)年六月、独自に町村会規則を公布した。この規則により、一〇〇戸未満の村には一〇人以下の議員、一〇〇戸以上二〇〇戸未満では一五人、というかたちで戸数に応じた議員定数が定められ、満二〇歳以上の住民による公選制による村会の開設が認められた。
小平では、一八八一年に小川村に村会が開設された。小川村会については「神奈川県北多摩郡小川村村会規則」が残されている。全体で三四条におよび、総則・選挙・議則・開閉・付則の五章から構成されている。第一条では「村会は本村の公共に関する事件および其経費の支出徴収方法を議定する」とあり、村会は村の公共にかんすることと、村にかかわる予算・決算を議論する場、と定められている。そして、戸長の発令のもとで通常会と臨時会が開かれることをはじめに、以下、議事進行方法などが規定されている。議則・開閉では、議事進行の詳細がまとめられているが、もっとも多くの項目が割かれているのが、選挙にかんする項目である。第一一条から二四条が選挙にかんする事項であり、ここでは、選挙人・被選挙人の資格、投票方法、任期などが詳細にまとめられている。村会開会にあたっての重要事項が、村会の構成員を選任する選挙にあったことがみてとれる。
最初の小川村村会議員の一覧が表1-5である。議長の小野弥右衛門(やえもん)以下、元組頭の家々がみられる一方、織物や酒造、質屋などの産業に従事して近世後期以降に台頭した家もみられる。
表1-5 1881年小川村村会議員一覧 | ||||
議員名 | 旧村役 | 明治10年頃の持反歩(畝) | 余業 | 前歴 |
議長 小野弥右衛門 | 組頭 | 372.12 | 織物商外 生糸中買 | |
副議長 細田佐十郎 | 組頭 | 660.26 | 織物商外 米穀小売 | |
師岡弥市郎 | 590.19 | |||
宮寺熊右衛門 | 1640.28 | 酒造 | ||
金子鶴蔵 | 1505.22 | 質屋 | 酒造 | |
佐藤音次郎 | 組頭家 | 111.15 | ||
丹生半蔵 | 組頭 | 193.19 | ||
加藤新蔵 | 203.28 | |||
森田蔦吉 | 299.2 | 質屋 | ||
新井茂十郎 | 組頭 | 100.06 | 宿屋 | 飲食店 |
立川勝五郎 | 1665.03 | 水油商 | 人力車・質屋 | |
森田粂蔵 | 673.13 | 酒造 | ||
荒井伊左衛門 | 米穀商 | |||
青木磯右衛門 | 1025.18 | 質屋 | ||
浅見幸太郎 | 1041.17 | |||
原島林蔵 | 648 | 織物商 | 質屋 | |
清水喜一 | 組頭 | 202.1 | 質屋 | |
加藤広吉 | 80.21 | 荒物雑貨 文具商 | ||
古田宇八 | 758.22 | |||
立川関太郎 | 組頭 | 928.16 | 質屋 | |
(出典)小川家文書「神奈川県北多摩郡小川村村会規則」より作成。 |