農地の買収・売渡

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一筆調査や農地台帳の整備など準備作業が終わると、農地の買収・売渡計画が作成された。その際必要になる買収の基準については、各地域の実情に応じて決められることになっており、東京都の場合、①不在地主の小作地全部、②在村地主の小作地のうち七反歩を超えるもの、③七反歩以内の小作地でも自作地との合計が二町二反歩を超えるものが買収の対象となった。またこれ以外に、宅地や未墾地なども農地として活用できると認定されれば買収が可能であった。こうして作成された買収計画にもとづき農地買収がはじまった。その結果、小平町では一九四七(昭和二三)年一〇月から五〇年七月までに合計三八九町八反〇畝の農地が買収された(表5-3)。さらに、農地以外にも宅地二万二二一五坪、未墾地(旧軍用地及び国有地)一三三町三反九畝の買収が実現している(「農地等開放実績調査」)。
表5-3 買収農地面積および売渡面積
買収時期買収農地面積うち売渡面積
1947年10月36.7735.23
12月253.33234.04
1948年2月15.0013.32
3月9.367.68
7月37.5635.80
10月17.1515.79
12月15.1614.16
1949年7月1.821.79
10月0.740.74
12月0.550.40
1950年3月0.300.08
7月2.012.01
389.80365.74
(出典)表5-2に同じ。
(注)単位は町歩。

 表5-4は被買収地主の内訳である。被買収地主は全部で九八八戸であったが、内訳をみると、在村地主一六五戸に対して不在地主は八二三戸と圧倒的に多く、後者だけで全体の八割以上にのぼった。被買収面積別では、一〇町以上層は小平町最大の在村地主・荒井家のみで、在村・不在地主ともに五反未満層が全体の八一・五%を占めていた。不在地主の比重が高く、また被買収面積五反未満の零細個人地主が圧倒的に多いのは、小平町だけでなく同郡の田無町や東村山町の場合も同様であり、東京都ないし北多摩郡の地域的特質を反映しているといえよう。戦前来、小平学園の住宅地分譲など住宅予定地として小平の農地を購入する町外在住者が多く、零細不在地主の膨大な存在は、こうした都市近郊地域を舞台とした郊外開発の進展と密接に関係している。また、被買収地主には三三戸の法人地主も含まれていた。法人地主の個々の詳細については確認できないが、寺院や企業による土地所有が開放対象とされたことは間違いない(後述)。
表5-4 被買収地主の内訳
(単位:戸)
被買収面積在村地主不在地主
10~50町1(0) 1(0)
5~10町3(0) 3(0)
3~5町4(1)6(1)10(2)
1~3町48(1)32(4)80(5)
5反~1町35(3)53(5)88(8)
5反未満74(3)731(14)805(17)
165(8)823(25)988(33)
(出典)表5-2に同じ。
(注1)括弧内はその内の法人地主の数をさす。
(注2)不在地主中の法人地主の数が合わないが、史料の数値をそのまま掲載した。

 なお、自作農創設特別措置法にもとづく買収除外農地は全部で二五町七反三畝(四〇件)となっている。東京第一師範学校、国立武蔵療養所、東洋英和高等女学校、恵泉女学校などの施設に附属した農地が買収除外の指定を受けている。

図5-6 恵泉女学園短期大学園芸科 1955年頃
小平市立図書館所蔵

 こうして買収された農地は、売渡計画にもとづき耕作者に順次売り渡された。実際に売り渡されたのは三六五町七反四畝で、買収農地全体の大部分にあたる九三・八%であった(表5-3)。では農地の売渡を受けたのはどのような農家が多かったのだろうか。表5-5は農家階層・経営規模別の農地売渡状況である。売渡を受けた農家は合計七三二戸で、うち小平町在住者六三一戸、町外在住者一〇一戸となっている。町外在住者への売渡面積は一割程度であり、大部分は小平町内での売渡である点をまずは確認しておきたい。農家階層・経営規模別で最も多くを占めていたのは小作農で、特に五反未満層(二一・六%)の比重が高い。しかし、売渡面積はわずか九%に過ぎず、一戸当平均売渡面積も二反一畝と極めて小さい。注目すべきは以下の二点である。一つは、小作農の五反以上一町未満層と一町以上二町未満層の両者で売渡面積全体の約半分(四九・〇%)を占めていること。二点目は、全体の一戸当平均売渡面積(五反歩)以上の売渡を受けた階層・経営規模は、小自作農の二町以上三町未満層・一町以上二町未満層、小作農の二町以上三町未満層・一町以上二町未満層・五反以上一町未満層であること。つまり、これら小自作農・小作農の経営上中層が改革の恩恵を最も強く受けることになったのである。同じ小自作農・小作農であっても、経営規模によって農地改革の及ぼす影響が大きく異なっていたことに留意しなければならない。
表5-5 農家階層・経営規模別の農地売渡状況
農家階層経営規模農家戸数売渡面積1戸当平均
戸数(戸)構成比(%)面積(町)構成比(%)(町)
自作農2~3町200.1900.10
1~2町91.20.700.20.08
5反~1町00000
5反未満100.0200.02
自小作農2~3町111.53.370.90.31
1~2町658.923.566.50.36
5反~1町253.47.292.00.29
5反未満121.63.961.10.33
小自作農2~3町91.211.213.11.25
1~2町517.039.8810.90.78
5反~1町273.79.782.70.36
5反未満91.21.500.40.17
小作農2~3町81.111.933.31.49
1~2町10514.3106.0329.01.01
5反~1町13919.073.2620.00.53
5反未満15821.632.759.00.21
村外居住者 10113.840.2411.00.40
 732100.0365.74100.00.50
(出典)表5-2に同じ。
(注1)農家階層・経営規模は1945年11月23日現在の状態。
(注2)自作は経営総耕地面積のうち自己所有が9割以上の農家。
(注3)自小作は経営総耕地面積のうち自己所有が5割以上9割未満の農家。
(注4)小自作は経営総耕地面積のうち自己所有が1割以上5割未満の農家。
(注5)小作は経営総耕地面積のうち自己所有が1割未満の農家。