小平町の畑作経営改善事業

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農産物の特産化が目指され、農業経営の安定のために養豚が奨励される一方で、かんがい施設の整備から輪作体系の改善もはかられた。
 一九五二(昭和二七)年、東京都農業試験場は、これからの東京都の農業を支える畑作地域の経営改善と輪作体系の合理化をおこなうために、小平町で畑地灌漑(かんがい)試験計画(五か年)を立てる。都下では初の試みで、東京都、小平町、小平町農業協同組合は畑地灌漑連絡協議会を組織して、試験地を小川六番地区に選定する。小川六番地区は、冬作として麦、夏作として陸稲のほか、すいかなど蔬菜類を生産する小平町内で代表的な農業地域である。そこで灌漑施設を整備して、陸稲を主体とした蔬菜類の輪作経営の改善が目指された。灌漑栽培の研究のため、直径一二インチ(約三〇cm)、深さ四〇八尺(約一二四m)の電動ポンプ付きの深井戸とコンクリート製の貯水槽などの施設が設置された。

図5-11 灌漑試験施設 1955年頃
『郷土学習写真資料』No.1

 試験終了後の一九五六年一〇月、小平町は東京都から深井戸施設の払い下げを受ける。小川五番から七番の農家は小平町畑地灌漑利用組合を組織して、町より無償貸与された。しかし、この施設はあくまでも試験用につくられていたため、貯水槽容量やそこから畑までの配管などの点で利用範囲が限られていた。そこで利用組合員三三名は、一九五八年五月、施設拡充費二〇五万円を都補助金八〇万円、町補助金六五万円、受益者負担金六〇万円(小平町農業協同組合より借入、五年年賦償還)にて用立てることを計画する。東京都知事宛てにこの深井戸施設の拡張を願って補助金要請の陳情書を提出すると、東京都は同年一二月に拡張費のほぼ満額に等しい二〇〇万円を東京都土地改良事業補助金として交付した。
 また、「農山漁村建設総合対策要綱」(一九五六年四月六日閣議決定)の補助金を得て、新農村建設事業が小平町でもおこなわれた。農地交換整備、適地適産奨励、共同施設、技術研究施設及び生活改善施設に要する経費について、国より三~五割の補助金が得られた。町内の生産組合、農業団体によって小平地域農村振興協議会が組織され、一九五七年度に総額二四二万円の畑作経営改善事業が実施された。