町誌の完成と小平郷土研究会の発足

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完成された『小平町誌』は、学界でも高い評価を得た(「木村史学の原点」)。にもかかわらず、編さん委員として敏腕をふるった地元の小川愛次郎は、「八〇点以上」の評価を付けることには躊躇(ちゅうちょ)せざるをえなかった。それは「近隣村落との比較がない」、「小平の独自性が浮かび上がってこない」、「町民の要望に答えてくれない」、「自分の町の町誌を読むような気がしない」などと厳しい批判をもっていたからである(「創刊の辞」、「小川睦郎委員長宛書簡」)。

図5-18 小平町誌完成祝賀式
小平市立図書館所蔵

 『小平町誌』に飽き足らなかった愛次郎ら地元に依拠する郷土史家は、活動を開始した。町誌刊行から半年あまりしか経たない一九六〇年一月、「小平郷土研究会」を立ち上げ、町民による「足が地についた」、「自分の町」のみずからの祖先の歩んできた歴史を内在的に探る道を歩むことになった。そして「如何にすれば町自体を世界の進運から取り残されないようにするか」という課題と積極的に取り組むことになったのである(「創刊の辞」)。それは小平町が単独で市制を施行する一年八か月前のことであった。