一九五〇年代の商店

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小平町の事業所統計調査の集計データを用いた『小平町誌』の記述によれば、小平町の一九五四(昭和二九)年における卸・小売業数は二七七店で、その内訳は小売業が二五九店、卸売業が一八店であった。小売業数のうち飲食料品小売業が一三一店、つまり約半数が飲食料品小売業で占められていた。全国平均からみれば、人口に対する小売業店数の割合は少なく、卸・小売業数に対する飲食料品小売業数の割合はやや高く、織物・衣料・身回品小売業の割合はやや低かった。このことは、小平町では町外への通勤者が多く、飲食料品は住宅の近くで、織物・衣料・身回品小売業は国分寺や都心で買い物をするという消費行動が反映された結果と考えられる。
 商業の振興を目指して、小平町と小平町商工会では商店コンクールを開催している。『小平町報』第二二号では、一九五五年二月二五日におこなわれた第二回商店コンクールについて、概要、審査の総評と優良店舗の概評などを掲載している。コンクールの目的は「一般顧客に対してさらに買いよい、愉しい商店となり、商業機能の発展に寄与し、町の産業振興をはかり、他市町村に流れる顧客を吸収すること」とし、審査基準は「商店の店舗外観、店内装置、商品陳列、採光照明、サービス、衛生施設等」とされた。応募店舗数は二九店で、そのうち最優良店舗を一店、優良店舗を一〇店選出した。
 審査の総評では、①全般的に商店が保守的すぎる傾向にあり、新商品、とりわけ若い客層向け商品に注意を払う必要があること、②店舗構造上の欠陥が目立ち、多種多様な商品を漫然と広げているだけで立体的に陳列する工夫が求められること、③照明や価格表示の仕方も「近代化」する必要があること、といった厳しい指摘が続いた。客は仕方がないから各商店でものを買うという状況に鑑みて、今後予想される小平町への新しい客層の流入に対応できるのかどうかを憂慮している。
 一方、優良店舗の各概評をみてみると、「多種の商品」「商品の豊富な事」といった品揃えがよい店、良いサービスが提供されて「親しめる店」「活気のある買いよい店」が評価されたようだ。改善点はやはり「入口近くに高い遮蔽物」「ケース陳列に依存しすぎ」「店内はくらくなり」といった具合に、ほとんど店舗構造、商品陳列、採光照明の方法についての指摘が多かった。
 商業の振興が目指されるとき、店舗構造や商品陳列、照明方法など個々商店自体の体質改善を求めたところに当時の特徴があった。商店街全体の活気や振興策は、まだ評価の対象になっていなかった。

図5-23 小平町内の商店のようす 1955年頃
小平市立図書館所蔵