GHQ通牒と署名捺印

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小平第二小学校に残る『連合軍関係文書綴(昭和二〇年一〇月以降)』の最初に綴じられている罫紙には「連合軍最高司令部ヨリ発セラレル通牒ヲ忠実ニ且ツ迅速ニ各個人ノ責任ニ於テ履行センガ為捺印ヲ行ルモノナリ」との文章に、学校長以下教員二九名の署名捺印が添えられている。連合軍最高司令部(GHQ)に忠誠を誓うような文言をあえて簿冊に付したのは、「占領」という事態のもとでの、教員たちが抱く不安やおびえのあらわれのように思える。GHQは、軍国主義・国家主義的な思想や教育の清算と、民主的教育への改革を重視していたが、学校と教員たちが矢継ぎばやにこれまでの教育の精算と改革を求められていたことが、この簿冊に綴じられている文書からわかる。

図5-29 連合軍関係文書綴
小平第二小学校所蔵

 東京都教育局長「終戦に伴ふ教科用図書取扱方に関する件通牒」(一九四五年一〇月四日)という文書は、しばらくは現行教科書を使うが、「戦争終結に関する詔書の御精神に鑑み適当ならざる教材」の全部ないしは一部を削除することを求めている。教科書へのいわゆる「墨ぬり」の指示である。また北多摩地方事務所長「終戦後教育に関する応急措置に関する件」(一九四五年一二月一九日)は「軍国主義的色彩を帯ぶる校具施設」の除却を求めており、銃器、木銃、長刀、木剣の「即時廃棄」と、柔剣道用具、軍国主義的色彩を帯びる掲示物、図書、地図等の「徹底的除却」を指示している。ただし「尚前記除却に際しては努めて児童の注意を避け教育上遺憾なき様措置せられ度」と児童への配慮が同時に求められていた。児童が大切にしていた教科書に墨を塗ったり、備品・掲示物が突然撤去されたりといった措置は、教師はもちろんのこと、児童にも複雑な感情をもたらしたであろうことは想像に難くない。