公民館で学ぶ

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前述のようにいち早く活発な活動を展開した小平公民館は、合理的な家事技術の啓蒙活動も展開している。一九五二(昭和二七)年一月、公民館では社会学級と称して、職業や家庭、社会科目などの二二講座を開催した。「乳幼児のしつけと育て方」「料理と栄養」「和裁」「高等洋裁」「家庭衛生」「市民の教養」「婦人の教養」など、女性に向けた講座も種々用意し、前年よりも講座の数を拡充し「男女成人、青年の職業上、家庭生活上、社会生活上の技術、知識、教養の向上を図り、又個人としての人格の完成や情操の純化を期して行うもの」と、町報紙上で宣伝した(『小平町報』第四号)。当時、公民館兼務職員であった近藤春雄は、一九五〇年代前半の公民館活動を「①これからの小平を創っていく青年(特に、新旧教育制度の谷間の農家の跡つぎたち)をどうするか②農家の主婦を対象にした生活改善(洗濯のし方、カマドの改善等)が主な柱であった」とのちにふり返っている(『公民館三〇年の歩み』)。
 一九五五年八月には、小平公民館と小平学園東町婦人会の共催で三週にわたり「やすくておいしい家庭料理」講座が中学校の調理室を会場に開かれた。一三〇名の参加者は、第一回目は、パン食に合うおかず―納豆挟みパン、南瓜ホワイトソース、とうもろこしのスープ、第二回目は、おべんとうのおかず―玉子さらさ焼、白ス干(幼稚園向)、ドライカレー(小中学校向)、てりやき(大人向)、第三回目は、丼物―親子丼などを勉強したが、「ただ単に、作り方の技術面だけでなく、その底を流れる栄養や時間、経費、一日の生活、愛情などについても話し合い」をおこなった(『小平町報』第二四号)。町報で報告されているように、「話し合う」ことが、家事技術に加えて重視された講座であった。一九五七年二月には「お母さんも試験 洗濯コンクール」が開かれた。成人学級で習得した洗濯技術を広く普及するために、選手となった主婦たちは二人一組となって大勢の人たちの前で、技術や知識を「要領よく、最大限に発揮」した。この催しに三〇〇名の主婦が集まり地元の代表選手の競技に声援を送った(『小平町報』第三二号)。

図5-36 成人学級料理講座のようす
『小平町報』第24号

 公民館はこうした家事技術講座への参加を「町内主婦の方々が一人でも正しい合理的な生活を送って戴く」ためと呼びかけたが、同時に、講座をつうじての「仲間づくり」を期待していた。公民館は「よい政治、よいくらし、楽しい人間関係」を目指すことが社会教育の使命だと位置づけ、「仲間づくりを通じて広く社会の人々に及ぼして行く」、「自分で考え、判断し、生活をよくみつめ、他人の立場をよく理解する」力を町民に求めた。
 人間が社会生活、共同生活の中でよい政治、よいくらし、楽しい人間関係等々を望むのは誰でも同じですが、そうしたことを解決、改善する方法の重要な一部門が社会教育〔中略〕成人学級、婦人学級、青年学級、青年会、婦人会、PTA、体育グループ等々はみな共通する問題をもった人々の集りで、そのようなグループでの活動を通して広く社会の人々に及ぼして行くわけです。こうした活動の中で最近強く「話し合い」が叫ばれています。
 話し合いは自分で考え、判断し、生活をよくみつめ、他人の立場をよく理解するということが条件で行われます。これによって判断力、問題意識が高まり、健全な親しい仲間づくりが生れてきます(『小平町報』第三四号)。

 「話し合い」「仲間づくり」という民主主義社会の基本ルールを、家事技術を向上させる講座から女性たちは自然に学んでいた。