会報『さざんか』の発刊

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一九六六(昭和四一)年一月、小平団地自治会会報『さざんか』が創刊された。タブロイド版二頁(のち四頁)のタイプ印刷による印刷物で、団地自治会幹事会広報部の編集により原則月一回刊行でのちに不定期刊となった。紙名は会員に公募し、山茶花が咲き始めた頃に自治会が発足したことにちなんで選ばれた。紙面では自治会の活動や議論の経過報告、住民への問題提起、各専門部の活動報告や催物への参加呼びかけ、住民の投書や「会員交流欄」、俳句や詩など、少ない紙面に豊富な要素が盛り込まれていた。一九六八年二月号からは増頁する一方、近隣の商店等の広告が掲載されるようになった。なお団地自治会幹事会はこのほか『さざんかニュース』を一九六八年頃から不定期で刊行して、催物や共同購入など自治会の事業に関する連絡や幹事会の活動(値上げ問題等)の速報を掲載した。
 創刊号には「扉を開こう」という詩が掲載されている(近現代編史料集④ No.一二一)。鉄の扉とコンクリートの壁で隣室と隔てられた各住戸は、それぞれの家族の城で、隣人に気兼ねなく私生活を追求できる空間というのが集合住宅の特徴であるし、隣人とのつきあいにわずらわされたくないというのが住民の本音であった。団地生活者は、こうした閉鎖性・孤立性に陥りがちであるのだが、この詩は、生活していく上での支えとなる「友だち」が「扉ひとつへだてたところに立っている」ことを、集合住宅での生活のメリットと捉えてみせている。そして
移り住んで初めて聞く
あかつきをつげる鐘の音を合図に
さあ 扉を開こう
さわやかな新しい光の中で
みんな 家族のように
笑顔を交し 言葉を交し
心をつなぎあうために

と呼びかけているのである。つまりここには、住民たちみなが「扉を開」いて、「家族のように」つながり合い、協力し合う気風をこの団地に育てていこうという、初期住民の意気込みと期待を読み取ることができる。

図6-33 小平団地自治会『さざんか』創刊号、1966年1月1日

 発足した小平団地自治会は、「団地居住者の生活環境の改善と相互の親睦」(会則)を共同で、自治的に遂行するために多岐にわたる活動を展開した。表6-19は自治会結成直前の住民集会で出されていた要望である。入居まもなくから、改良を加えて住みやすくしていこうという意欲が住民には強かったのである。団地自治会はこれらの問題の解決に奔走し、成果を上げることで住民からの信頼を獲得し、その結果、家族と市行政との中間で、住民の共同と自治によるくらしを支える仕組みとして機能していったのだった。
 
表6-19 1965年6月20日の住民集会で出された主な要望
1.保健・衛生
ダストシュートの利用方法の改善。団地内で乳幼児検診を。診療所の診療科目増設と診療時間延長。
2.交通
危険と騒音防止のため団地内のバス通行禁止を。バスの運行時間の延長と料金値下げ、運行経路の改善。自家用車のユーザークラブをつくる。
3.教育・保育
保育に関する要望をまとめよう。遊び場の改善。私設保育所の斡旋は出来ないか?
4.公共施設
道路にゴミ箱を設置して欲しい。遊び場、外来者用トイレの新設。プール、テニス・バレーコートなど運動施設の充実を。集会所の利用条件緩和を。
5.その他
 「買い物の不便さと家庭経済についてもう少し何とかならないか。」「トーフ屋のラッパが少しうるさい」。周囲の道路の騒音防止。
(出典)小平団地自治会結成準備発起人会『小平団地ニュース』第6号、1965年7月5日より作成。