「長期総合計画」の策定

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「長期総合計画」は、「基本構想」「基本計画」「実施計画」の三段階によって策定されている。「基本構想」は、長期的な展望にたち、一〇年から二〇年先のあるべき姿を描くものである。先にふれた一九六〇年代に進行した諸問題に対して、「基本構想」ではどのように対処しようとしたのか。
 「基本構想」では、「都市基盤の整備(土地利用・交通)」「社会環境の整備(住生活・産業経済・厚生文化)」「行財政の充実(行財政)」の三本柱を基本的施策として掲げる。三本柱のもとで、具体的には、土地利用において、土地区画整理をおこないつつ駅周辺の再開発を促進することが施策課題となった。交通では、幹線道路を整備しながらバス網を充実させ、歩行者の専用道をつくるなど、交通安全を確保できる環境づくりが目指された。住生活では、上下水道の整備、公園緑地の整備、消防・保安体制の強化が主な課題であり、産業経済では、農業を「都市農業」として育成すること、商業経営の合理化によって商圏を拡大する施策が練られた。厚生文化では、母と幼児の保健に力を入れながら、児童遊園地や保育園を増設する計画がたてられた。また、学校教育をみれば小中学校の増築や体育館やプールといった諸施設の充実が目指され、社会教育では地区公民館の設置がうたわれている。行財政においては、市役所を増築し、「動く市役所」も用意して、行政サービスの強化が掲げられた。「基本構想」の中心は施設や道路・橋梁などのハードにあり、「開発」を軸にした構想だったといってよい。

図7-1 「長期総合計画基本構想」に掲載されたイラスト(絵本作家・やべみつのり)

 これに対して一九七一(昭和四六)年に策定された「基本計画」は、「基本構想」によって定められた将来目標に向けて、財政や制度という現実的な枠組みのなかで、政策の実現可能性と具体性とを検討するものである。期間は、財政や制度の見通しが可能な五年から一〇年が適当であった。「基本構想」の段階では実際の行政のあり方にあまりとらわれず、理念を掲げて、生活基盤や社会環境についての総合的な観点から策定されるが、「基本計画」では行政の実際を十分に考慮して策定される。もう一方の「実施計画」は、財政や制度の確実な裏づけをもって実行するもので、期間は三年から五年程度の間隔だった。小平市では、三か年計画を基本として見直しながら策定されている。