都営住宅の住民もダイエー出店に反対する

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市民のなかにはダイエー進出を歓迎する動きもみられ、小平市議会へ大型スーパーの進出に賛成する陳情、請願が提出されている。一方で、進出予定地のすぐ目の前にあった第三三都営住宅(一八六世帯)の約一二〇世帯では、ダイエー建設反対運動を展開する。東京都、小平市、ダイエー、鹿島建設に要望書や質問書を提出したが、満足できる回答を得られなかったために、一九七七(昭和五二)年五月二九日、東京地裁八王子支部に工事の中止を求める仮処分申請を提出した。
 「大手スーパー対小売店」の対立に直接かかわらない近隣住民が、工事中止を求める仮処分申請を提出することは、首都圏の各地で起こっているスーパー進出をめぐる問題のなかでまだ例の少ないことであった。
 第三三都営住宅の住民が反対したのは、①ダイエー小平店が進出すれば二〇%程度の交通量の増加が想定されるうえに、建設予定地付近には都道の七差路交差点があり、その東・南・北側には鉄道の踏切もあって、元々悪い交通事情がさらに悪くなること、②交差点付近の排ガス量、騒音量はすでに高い数値を示していること、③予定地のすぐ北側には総合病院の緑風荘病院、南側には精神科をもつ松見病院が隣接し、東側には高層住宅団地の小川住宅(日本住宅公団分譲住宅)もあり、医療施設、住宅地としてこれ以上の環境悪化を避けたいことにあった。

図7-14 都営住宅住民のダイエー進出反対姿勢を報じる新聞記事
『朝日新聞』多摩版 1977年7月5日

 申請書では、「当初、消費生活の便宜さのみを安易に信じて建設に賛成したものも、次第にその実体を知るに及び、これに反対を唱え」るようになったと記されている。最初は、住民のなかでも消費生活の充実を求めて賛成したが、それだけでは住みよい環境を築くことができないことに気づき、反対運動を展開したのである(『読売新聞』一九七七年五月二九日)。住民のなかに、よりよい住環境への関心がでてきたのである。