一九六八(昭和四三)年五月に消費者保護基本法が成立した。「消費者の利益の擁護及び増進に関する対策」、「国民の消費生活の安定及び向上を確保」、「地方公共団体は…当該地域の社会的、経済的状況に応じた消費者の保護に関する施策を策定し、及びこれを実施する責務」という法の主旨のもとに、全国各地で消費者センターの設立が相次いだ。東京都にも一九六八年一一月に東京都消費者センターが設置され、武蔵野市に支所がおかれた。これに先立って、四月から小平市役所には消費者相談の窓口が置かれ、「消費生活全般にわたっての相談、苦情の処理や消費者教育を行ない、市民の生活上の利益を計ることを目的」に無料相談をはじめた(『小平市報』第一三四号)。
小平公民館では、早速、六月に消費者教育の一環として電気器具の価格や流通機構についての講習会を、小平市と小平生活学校の共催で企画し、「日ごろ困っていること、知りたいこと、などについてメーカー、販売業者と話し合い、よりかしこい消費者になりましょう」と参加をよびかけた。また、この年の成人学校では、「私たちのくらしと日本経済」「都市における諸問題」「マスコミと主体性の確立」をテーマとした講義を組み、市民大学でもますます複雑化しつつある社会現象を的確にとらえ、その根源をさぐり、市民一人一人がいかに対処していくかを考えることを目的にした経済講座を開いた(『小平市報』第一三七号、第一四一号)。翌年の成人学校も全一〇回の「物価問題を考える」講座を開き、冷凍食品の正しい知識や使い方を学ぶことをテーマにした消費者講習会も開かれた(『小平市報』第一六三号)。成人学校の経済講座に参加した修了者たちは、六九年一一月に経済研究会を立ち上げ、毎月一回学習会を聞くようになった(『小平市報』第一七二号)。
一九七〇年を前後して、市内には大型スーパーが相次いで開店し、市民の買物事情が変化するとともに、世間では残留農薬、食品添加物の危険がますます取りざたされ、光化学スモッグなどの大気汚染の心配も一挙に高まりだした。一九七二年六月に開設された中央生活学校では、「公害から健康を守ろう」をテーマに「毎日の生活の中で、なくてはならない洗剤などでも、使い方によっては有害となることがありますが、思いのほか忘れられています。ABS・PCBなど、いつのまにかわたくしたちのからだに入りこむ有害物質から家族の健康を守るのが、主婦の役割といえましょう」、「身近な疑問を持ちより、講師の意見をきき対話集会によって、問題解決の道をひらくのが生活学校運動」、「消費者の権利は、消費者自身の力によって守らなくてはなりません」と市民に参加をよびかけた。子ども連れの市民も参加できるように保育もおこなわれた。七年前にはじめて開設された小平生活学校よりも問題がはるかに具体的で、消費者意識の向上に結びついた(『小平市報』第二三五号、第二三八号)。公民館の講座や生活学校をつうじて、市民は環境汚染や食品公害に敏感になり、発言すること、権利を主張することを学んだ。
一九七二年九月から一一月にかけて、純正食品を食べようという消費者意識の高まりのなかで、消費者団体と豆腐業者の組合である豆友会が懇談会を開き、立川短期大学から講師を招いて食品添加物の毒性を学ぶ勉強会が開かれた。業者も無添加の豆腐づくりと販売にこだわるようになり、無添加豆腐の看板でアピールすることを組合内で取り決めた。「消費者と業者が協力して豊かな消費生活に向って前進」したと市報は大きく報じた(『市報こだいら』第二五一号)。市報には、七三年度から毎月消費者コーナーの欄が設けられ、消費者としての目を肥やすために「お店のはかり」「価格の真実 あいまいな表示」「玩具安全のマーク」などに注意を促す記事が掲載された。「中性洗剤の安全性の問題」なども取り上げられ、市政では消費者を保護する姿勢が鮮明になった(『市報こだいら』第二五八号~第二八〇号)。