消費経済課の設置

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一九七四(昭和四九)年四月、小平市に消費経済課が新設された。前年のオイルショック以来の「異常な経済情勢に対処し市民生活の安定対策の推進を、相談・苦情などの窓口の一本化を図るため」であった。その年の消費者行政対策事業の方針として、「消費者の権利を守り、安全で豊かな消費生活を実現させるための消費者擁護対策」、市民一人ひとりが「〝かしこく〟〝強い〟消費者となっていただくための消費者教育対策」、「消費者物価高騰などに対応するための消費生活安定対策」の三つを掲げた。具体的には、問題解決に助力する消費生活コンサルタントによる相談日の開設、市内業者と消費者の懇談会や消費者勉強会の実施、業界に対する適正価格や表示に関する行政指導のほか、消費者が「権利を正しく主張し、確実に意見を反映させるため」の意識向上をめざす講座の開講、そして市民らが運営する消費者グループ連絡会と生活用品交換会への協力などであった。市報では、「紙上講座シリーズ やさしい消費者運動入門」が連載され、「消費者の問題は、消費者自身が立ちあがる以外に本当の解決はできません。無関心やあなたまかせは許されません。消費者が社会的な力をつけ立ちあがることに、行政は積極的な、助言、助力を提供していきます」と市内で消費者問題への関心が高まることを促している(『市報こだいら』第二八〇号、第二八四号)。

図7-17 小平市消費生活課の消費者相談 1974年
『市報こだいら』第284号

 この年から、市政モニターのほかに「二〇歳以上の主婦三三人」の消費生活モニターも募り、アンケート調査などをおこなって経済動向を分析するなど、市民の声も集めた。そのなかの一人矢沢珠江は、新聞購読料の六〇〇円の値上げに対し、「新聞(社)は、他の電気、ガス等の値上げは大きく報じるのに自分達の番になると黙って値上げをする。このようなやり方に腹立たしさを覚えます。しかし、私たちの生活の中で新聞はいろいろな情報提供の大事な役目を持っています。一人一人の力では出来ないかも知れませんが、この際、大勢で力を合わせて不買運動をするくらいの意識が欲しいと思います」と声をあげた(『市報こだいら』第二八九号)。商品の包装に関するアンケート調査では、三三人中二九人が「包装ノー運動」に賛成と答え、意見の一致をみたが、社会で安全論が取りざたされている洗剤にかんしては意見が分かれ、合成洗剤の使用者が一八人、石けんが五人、併用者が一〇人という結果であった。また、問題となっている洗剤による手荒れについても、「ない」と答えた人の方が若干多かった。しかし、合成洗剤の安全性や河川の汚濁についてはほぼ全員が心配で、合成洗剤をやめて石けんを使おうという動きに協力している人、したい人は二七人にのぼり、石けんが安く買いやすくなってほしいという意見も出された。小平市は「知っていますか? 合成・中性洗剤の危険性」と石けん使用の啓発をしていたが、市民生活の実情と意見には差がみられた(『市報こだいら』第二九一号、第二九四号)。
 市民生活のなかには、洗剤のほかにも安全や価格、健康、合理性などをめぐって理想と現実が大きく異なる状況があった。また生活者だからこそ気づく食生活、ごみ、福祉などをめぐる問題が多々あった。そうした理想と現実の違いをより具体的に示し、理想への手順を考え、実行し、訴えたのが生活学校や生協などの消費者団体であり、その成果の発表の場が消費生活展であった。