高齢者福祉を考える

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高度成長にともなう都市への人口集中や住宅事情の変化にともない、ひとりぐらしの高齢者や高齢者だけの世帯が全国的に増加した。小平市においても例外ではなく、六五歳以上の高齢者の割合が増加し、一九七五(昭和五〇)年六月、市は厚生省「老人のための明るいまち推進事業」企画のモデル市としての指定を受けた。それより前の七二年には、福祉会館を設置していて、浴室や娯楽室など一般高齢者のセンターとしての機能とリハビリ機能を併せもつ施設をオープンさせ、マイクロバスの運行によって市内全域の高齢者の利用施設と位置づけた(『市報こだいら』第二三〇号)。
 小平団地生活学校では、オイルショック以降の値上げに翻弄されるくらしのなかで感じる不安から、福祉行政の学習を重ねていたが、七七年と七九年の二回、老人問題を重視した施策に着目して、「私達の暮らしと福祉(老人になったら)」「老人のコミュニティーセンターづくりをめざして」と題した発表を消費生活展でおこなった。小平団地では、入居後一四年経って六五歳以上の住人が二一〇人となっていた。七七年の展示では七五年から三年間の小平市の歳出における民生費の割合、さらに民生費に占める老人対策費の割合が年々増加し、六五歳以上の人口が毎年四〇〇人ほど増加している実態を客観的に提示しながら、市内の老人が受けることのできる福祉施策を紹介した。小平市の老人福祉事業は拡充されていたが、生活学校では、この調査を機会に、施策はあっても知らなければ受けられず、施策がわかっても果たして内容はどうなのか、と疑問を投げかけた。
 さらに高齢者問題にかんする実態調査をおこない、近所の人とのお付き合いはあるものの老人クラブやサークルへの参加率は高くない実態や、きめられた時間にマイクロバスに乗って行かなければならない福祉会館は暇があって元気な方だけに限られてしまいがちであることを指摘した。そのうえで、多くの人が利用しやすい身近かな、老人のコミュニティセンターを市で計画的に建設してほしいと提言した(近現代史料集④ No.九五)。
 学園東町生活学校も食生活という視点から高齢化社会の問題に取り組んだ成果を発表した。一九八三年の消費生活展で、これからの高齢化社会に向けて、福祉施策や民生委員の一層の充実を望むと同時に、「老人と若い人とがおたがいに力を合せて、さけることが出来ない問題について連帯と共通の理解をもつことが必要」、「高齢化をささえて行くような地域を作る」、「高齢者一人一人が精神的にも、経済的にも自立した生活ができるように努力したい」という自立の視点に立った提言をおこなった。そのためには老後の健康が何よりも大事だと考え、減塩の食事の学習に発展させ、展示では家庭によくある食品の塩分含有量を紹介して、それぞれの家庭の味の見直しをよびかけた(『小平市消費生活展 展示のしおり』第一〇回)。八四年度には、老後の食生活をテーマに、市販のおそうざいに着目した学習活動をおこない、味・量・価格について、筍土佐煮、きんぴら、煮豆など実際の商品を近隣のスーパーマーケットで買い求めて試食し、東京都消費者センターでの成分分析結果などを発表した。あわせて実施したアンケート調査では、安全でおいしい分量と価格で適切なおそうざいができたら八割の人が利用したいという回答を得たことから、次にスーパーマーケットや小売店の担当者、小平市消費経済課と健康課の職員らを交えて対話集会を開催し、おそうざいの成分表示とヘルシーコーナーを設ける申し合わせ事項をまとめた(近現代史料集④ No.九六・『小平市消費生活展 展示のしおり』第一二回)。高齢化社会の食生活に向けて、個人としてすべきこと、行政に要求すること、地域としてすべきことを見直す運動であった。

図7-19 高齢者福祉のようす 1985年
『小平市新長期総合計画』