しかし、ここに至るまでには、市民の図書館に対する強い要望があった。都立立川図書館の「むらさき号」による巡回貸出しがはじまったのは一九五三(昭和二八)年七月のことであった。小平町では、三か所の駐車場を用意し、貸出しを開始したが、市民の読書熱は高く、「小平の利用がなくなったらむらさき号は廃止になる」とまで言われた(『小平市三〇年史』)。この読書熱を背景に一九六四(昭和三九)年七月に、旧町役場を改造した小平公民館が開館し、そのなかに図書室も開設された。公民館の児童文学講座(一九七一年)などを契機に子ども文庫活動が盛んになり、図書館設立の機運を高めていった。一九七三(昭和四八)年一〇月に小平市長期総合計画実施計画に図書館建設が決定されると、市民の声を反映させるための図書館研究会が七四年二月に発足した。子ども文庫、むらさき会、老人会、そのほか学校図書館や社会教育、市関係者などが参集し、あるべき図書館の在り方を検討し、その提言にもとづき一九七五年五月に小平市図書館(現仲町図書館)が開館したのである。以後、地区館の設立が続き、そのセンターとしての中央図書館が設立されたのが一九八五年七月のことであった。
図7-26 図書館開館初日のようす 1975年
小平市立図書館所蔵
後発とはいえ、小平市立の地区館には、それぞれの特色が付与されている。地域資料サービスとして地域新聞・タウン誌・ミニコミ誌は仲町図書館、リーフレット類は花小金井図書館、点字図書や録音資料は小川西図書館、教科書・郷土写真資料は喜平図書館、新聞記事や郷土写真の定点撮影は上宿図書館、ポスター類は津田図書館、市内在住著作者の著作は大沼図書館、というようにジャンル別に所蔵館が分かれ、各館を結ぶセンターとして中央図書館が存在している。図書や資料の充実は全国の同規模の自治体のなかでは上位にあり、さらに多様化を追求し、どこでも市民が等しく利用しやすく、それでいてまた効率性も高い図書館運営が目指されている。