図7-28 玉川上水(創価高校付近) 2012年
「何もしない」守る会の活動は、しかし活発であった。①会報の発刊、②会員の拡張や宣伝、③歴史研究の発表や風物などの展示会の開催、④上水を散策するなどの企画・実行、⑤玉川上水が直面している諸問題の情報収集と行政へ陳情などの働きかけなどを掲げ、すぐさま実行に移していった。
守る会発足から半年後の一九七五年二月に、会報『玉川上水』を創刊した。はじめのころは年二回ほどだった刊行ペースは徐々にダウンしたものの、今日(二〇一一年)までほぼ年一回のペースで刊行を続けている。会報の記事内容は、玉川上水の現状報告や動植物の生態系、歴史探求のほか、上水の光景を歌い込んだ短歌・俳句・詩・随筆などの文芸や絵画、古老からの聞き書き、さらには意見や提言などと多岐にわたっている。
なかでも玉川上水の土手に生育する植物の調査研究をした織田雅雄「玉川上水の野草」は、第七号(一九七九年一二月)から第一七号(一九九二年七月)までで、延べ一二五種の野草を紹介した。織田の植物研究を貫く理念は、「この、かれんな野草の花々を私達の生活の身近かな場所で、いつくしみ、育てていくことは、人間の生活環境を守ることと同一である」(『玉川上水』第一七号)という共生思想であり、それは会員の多くが共鳴する考えでもあった。
会報執筆者も、小平市域の大学教員や市内に居住する山本茂実らの作家、武蔵野美術大学に通ったタレント城戸真亜子(「ユーミンの歌と玉川上水の小径」)、さらには一般の市民までと幅広い。実践活動も活発で、講演会などによる啓蒙、上水の清掃活動や水質検査、市や関係省庁への陳情と忙しい。市議会選挙が近づけば、玉川上水の保護回復の手段について、立候補予定者にアンケート調査なども実施した(「小平市議選立候補予定者アンケート」)。