都立清瀬高校では、授業の一環として野外調査を実施し、『地域調査報告書』を刊行している。第一回調査報告書は、一九七四(昭和四九)年三月にだされ、以後毎年一回発刊されている。これは社会科教育の一環としておこなわれたもので、目的は巡検とレポート作成にあった。
生徒は学校の所在地の清瀬を起点に、通学区域である保谷、田無、清瀬、東村山、小平、小金井、東久留米の各市にグループごとに出かけ、人口、商業、農業、土地利用、公営住宅、商店街などの分野ごとに調査研究に励んだ。初年度においては、「小平市の農業の変化 小川のたんざく型地割の変化と関連して」というレポートが提出されている。これは一九六〇年以降の農業人口減少と作物栽培の変化、さらには宅地開発による短冊型土地利用が変容している実態を報告したもので、宅地開発は短冊状の奥の方から進み、減る一方の耕作地では栽培作物が麦やさつまいもからきゅうりやトマトなどへ、さらには庭園植物へと変化している状況を伝えている(『地域調査報告書』第一号)。
以後も毎年野外調査は続き、一冊ずつ刊行されていくが、ここで気づくことは、生徒の選択するテーマが、第一回(一九七四年)から第九回(一九八二年)までは人口や農業、商店街など産業にかんすることが多く、一〇回(一九八三年)以後は、老人福祉、養護施設、資源のリサイクルなどに変化している点である。その一〇回以降の後発世代の生徒が導きだした結論は、共生社会の実態で、環境や社会的弱者への関心が高い社会、たとえば障害者問題にかんしては「私達が大人になって、さらに私達の子供が成長していく頃、障害のない者も、障害者も、みんなにとって住み良い世の中にしていけたらよい」(『地域調査報告』第一九号)という社会の実現であった。