二一世紀に入った二〇〇六(平成一八)年、小林正則市長の小平市では、今までで三回目の長期総合計画である「第三次長期総合計画」をまとめた。二〇〇六年度から一五年間、二〇二〇年度までの小平市の将来像を指し示したものである。一九七〇年に策定された一回目の「長期総合計画」が行政中心の「開発」に重点をおき、二回目の「新長期総合計画」が行政と市民の連携による「福祉」と「開発」に力点を置いていたのに対して、三回目の「第三次長期総合計画」には次の二つの特徴が読み取れる。
「くらし」は、「安全・安心で、いきいきとしたまちをめざして」の副題がつけられ、「地域・安全・生活・文化」を対象としている。「地域」は、「新長期総合計画」のコミュニティの視点を進めた市民の「参加と協働」による地域社会づくりを中心とする。コミュニティの再建、財政の逼迫(ひっぱく)化のなかで、「地域」の市民の「参加と協働」がいっそう強調されている。安全・安心の視点に加えて、新しい文化の創造と歴史の重視が目を引く。地域社会づくりの核として、文化と歴史が重視され、文化の創造と歴史資料の次世代への継承が位置づけられている。
「緑・水・環境」を「自然」としてまとめたのは今回の長期計画の大きな特徴であり、「新長期総合計画」以来の公園・緑地・用水の重視がいっそう発展させられている。「自然」には、「快適で、ほんわかとするまちをめざして」の副題がある。公園と緑、公共の緑、水循環の形成、玉川上水・野火止用水の水辺環境の再生が課題とされ、さらに地球環境への配慮、資源循環のまちづくりが位置づけられている。
「ひと」は「次世代育成・健康福祉・教育・生涯学習」を対象とし、「健康で、はつらつとしたまちをめざして」の副題を掲げ、「新長期総合計画」以来の福祉や育児重視の視点がさらに鮮明になっている。「次世代育成」として「子育て支援」と「保育サービス」「多様な生き方の尊重」が位置づけられ、「健康福祉」には「健康づくり」「高齢者福祉」「障がい者福祉」「社会保障」、「教育」には「小・中学校」「家庭・地域の教育」「幼児教育」、「生涯教育」には「生涯学習」「図書館サービス」「生涯スポーツ」がそれぞれ位置づけられている。
四つの目の柱が「まち」であり、「都市基盤・交通・産業」を対象にして、「住みやすく、希望のあるまちをめざして」の副題を掲げる。「都市基盤」としては、「快適な都市」「市街地の整備」「道路の整備」があり、「交通」には「交通網」「交通安全」、「産業」には「商工業」「農業」がある。
五つ目の柱は「都市経営」であり、「地方自治・行財政」を対象にして、「健全で、進化するまちをめざして」を副題にする。「地方自治」としては「分権型社会における自治体」と「情報公開」、「行財政」としては「行政サービス」「財政運営」がそれぞれ位置づけられている。とくに、二〇〇〇年の地方分権一括法の施行により、自治体と国の関係は、新たに「対等・協力」の関係になり、自治体は今まで以上に「自己決定」や「自己責任」にもとづく行政運営が求められるようになったとする。ここから市民の「参加」と「協働」が強調され、市民サービスの見直しと機動性が強調されている。
今回の長期計画では、「持続可能」なまちづくりや社会が強調されている。それも含めれば、今回の長期計画では、「新長期総合計画」とくらべていっそうソフトの面が重視されている。「新長期総合計画」が「福祉」と「開発」の二つの視点で成り立っていたとすれば、「第三次長期計画」は、ポスト「開発」の時代の将来像を示したものといってよい。
ハードからソフトへの課題の重点の移動は、五つ目の柱ともかかわる。五つ目の柱は、「都市経営」であり、厳しい財政状況と分権型地方自治や情報公開の必要性のなかで「都市経営」という視点が強調されている。「ひと」の強調ともかかわり、ソフト面・「ひと」の重視による都市経営をどのように進めていくのかが、二一世紀の小平市の大きな課題になっている。