図8-4 ふるさと村の「昭和30年代の結婚式」のようす 2011年
挙式は、花嫁行列からはじまり、新郎新婦が朱柄傘(あかからかさ)を差しての入園、親戚も行列に加わり、総勢二〇数名のはなやかなものであった。式場は、園内の民家「旧神山家住宅」の主屋であった。まず入家式がおこなわれ、「火またぎ」である。花嫁が藁束の火をまたぎ、玄関から母屋に入る儀式である。座敷では上座に花婿・花嫁が、その横に仲人が座す。その脇側に親戚・知人・友人・親族が座し、下座には「相伴当」がおり、司会を務める。「固めの盃」、「三三九度(さんさんくど)の盃」、「嫁の引き渡し式」がおこなわれたのち、宴席にはいり、「高砂」が謡われ、式は徐々に厳粛さが解かれ、和やかな雰囲気にかわり、主賓の小平市長小林正則のあいさつのあと、余興の獅子舞が小平市鈴木ばやし保存会によって演じられた。庭には、祝福の見学客があふれ、拍手やカメラのシャッターの音が鳴り止まない。酒宴のあと、鰹節と昆布だしが利いた手打ちうどんが出され、「お開き」は、「嫁のお茶」であった。婚家の一員になった嫁のあいさつがわりに注ぐお茶である。
ところで、この結婚式の会場は小平ふるさと村であった。小平ふるさと村は、天神町の地に一九九三(平成五)年五月に開園した。小川家から寄贈を受けた旧小川家住宅玄関棟の住宅を中心に水車小屋、消防小屋などを配置した歴史的建造物施設である。その後、旧神山家住宅主屋、旧鈴木家住宅穀櫃(こくびつ)、旧小平小川郵便局舎などを移築復元し、開拓当初の復元住居を残すに至っている。江戸初期から中期の建物を復元した開拓ゾーン、江戸後期の建物を復元した農家ゾーン、明治以降の近代ゾーンを配置し、時代にそって見学ができるように改善された。さらに、それに付随した小平の年中行事の再現をはじめとする農村文化や歴史を展示する企画も実施されている(『市報こだいら』第七三七号)。
式の進行は、小平郷土研究会の協力によるところが大であった。それをまわりの個人や諸機関・諸組織が支援したのである。司会役としての「相伴当」は、本来は近隣の家が担当するのであるが、今回担当したのは、小平市在住の落語家(真打ち)三遊亭右紋であり、祝いの「高砂」は謡曲松風会の羽毛田澄一が謡った。松風会は、一九六五年(昭和四〇)一一月に発足し、月一回の例会の素謡を、毎年一一月には大会を開催している。祝いの獅子舞を担当したのが、一九七〇年五月に発足した市指定の無形文化財の小平市鈴木ばやし保存会である。そして、料理を担当したのが武蔵野手打ちうどん保存普及会であった。