小平における郷土研究は、会報の発刊や古文書目録の刊行などが先行していたが、『小平町誌』で先鞭をつけた聞き書き手法による歴史研究が一九七〇年代後半から活発化する。その先駆は一九七六(昭和五一)年に発足した小平民話の会であり、その活動に刺激され、小平郷土研究会の一セクションである小平ふるさと物語部会も一九九五年に正式に発足し、活発な活動を開始した。この会も、小平民話の会と同様に公民館主催のふるさと物語講座から発生したもので、講師を務めた加藤有次(國學院大学教授)の呼びかけではじまった。まず勉強会を立ち上げ、その後に戦前の小平の生活慣習や事件などついての聞き書きを実施し、『小平ふるさと物語(一)』や『小平ふるさと物語(二)』を刊行するに至った。
ここには座談会を含め、三九編の出来事が収録されている。戦時下の青年学校や青年団の活動、高度成長期までの結婚式や葬儀などの民俗、さらには農作業などの生活実態が事細かく描かれており、また聞き書きゆえ臨場感に富み、小平の庶民生活がよく映し出されている。