「小平・ききがきの会」とアジア太平洋戦争

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聞き書きをもってして次の世代へ歴史を伝える活動としては、「小平・ききがきの会」の存在も大きい。ききがきの会は、一九九五(平成七)年四月に仲町公民館ではじまった市民講座「戦争体験と小平のむかし」からはじまった(『市報こだいら』第七八七号)。この会が掲げた理念は、聞き書きを記述するだけではなく、話者との会話をとおして「自分が経験できなかった体験や知識や知恵」を聞き出しながら、それを「有効な学習活動」と位置づけ、「身近な人を自分の教師に変えていく」ことをとおして、自己省察・自己認識をおしすすめたことにあった。翌九六年四月に自主サークルとして発足して、「戦時下の小平を記録する」作業に着手し、同年八月『ききがき そのとき小平では―戦時下のくらし』を発行、以後二〇一〇年までに九集まで刊行している。

図8-7 『ききがき そのとき小平では 戦時下のくらし』

 主に地域ごとの悉皆(しっかい)に近い聞き書き調査をおこない、人びとのさまざまな戦争体験や生活実態を聞き取った生々しい叙述が収められている。小平にあった学校から出征した学徒や少年兵などの戦地に赴いた人びとの体験だけではなく、小平での銃後の生活や陸軍兵器補給廠や経理学校、傷痍軍人武蔵野療養所などの軍施設で働いていた人びとの証言なども採録している。戦争体験を多面的にとらえようとする活動は、目を見張るものがある。みずからが直面した「それぞれ体験を記録することで戦争の実像を彫りだす」(『そのとき小平では』第三集)作業をおこない、戦争を客観化しながら教訓を見いだそうとする努力がなされている。
 なお、その聞き書きをとおして、学びながら、さらにみずからも学童疎開の実態を詳しく追求、研究した『疎開は勝つため国のため―小平町受入れの戦時疎開について』(一九九六年)なども上梓されている。