ついで策定された二〇〇〇年の小平市福祉のまちづくり推進計画では、「だれもが住みよいまち〝こだいら〟の実現」を目標に掲げ、以下の六点の推進方向を定めている(小平市健康福祉部『小平市福祉のまちづくり推進計画』)。「高齢者・障害者が地域で暮らすことのできるノーマライゼーションを基本とした福祉のまちづくり」「物理的・制度・情報伝達意識のバリアフリーを推進する福祉のまちづくり」「だれもが使いやすいユニバーサルデザインのまちづくり」「ハードとソフトが連携したまちづくり」「市民・事業者・行政との協働に基づく福祉のまちづくり」「〝こだいら〟らしい支えあいと温かみのある福祉のまちづくり」の六点である。ここでノーマライゼーションとは、障害のある人やない人が特別に区別されることなく、地域社会で普通にくらせるようにする考え方であり、ユニバーサルデザインとは、高齢者や障害者のための製品開発やサービス提供の考え方を一歩すすめ、若者や子ども、妊産婦、病弱者など、みんなが使いやすい製品や環境をつくり出そうとする考え方である。また、ハードは、建物や道路、設備など主に施設にかんするもののことであり、ソフトは、人、仕組み、制度などにかんするものを指す。
一九九五年、小平市教育委員会では、小学生用の副読本として『ともに生きるまち小平』を作成している。本書の冒頭には「小平市に住んでいる人々」が掲げられている。「みなさんが住んでいる小平市の中には、みなさんの友だちの他にも、たくさんの人が住んでいます」として、友だちの次に家族が紹介され、「家族は、一人一人の人が助け合って生きている場」だとする。ついで、「小平市には、たくさんのおとしよりや体の不自由な人、そして、外国の人が元気に生活しています」として、元気で働き、料理を習う「おじいちゃん」や、「わたしの家のそばには、体の不自由な人が働いている所があります」、「小平市の中央公民館の国際子どもクラブで、外国の人とあそんだことがあります」として、高齢者や障害者、外国人も小平市に住んでいることがいわれる。『ともに生きるまち小平』の「ともに生きる」とは、先の小平市まちづくり条例の規定にあったように、高齢者や障害者とともにということであり、子どもや外国人とともにということであり、小平市に住むすべての人とともにということであった。福祉は高齢者や障害者などを対象にするだけでなく、差異を認めたうえで、すべての人を対象にする考え方に発展してきたのである。
図8-10 手話を習う子どもたち
小平市教育委員会『ともに生きるまち小平』1997年