小平の在日外国人と行政・地域

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先に紹介したように、小平市教育委員会『ともに生きるまち小平』(一九九五年)や、小平市福祉のまちづくり条例(一九九七年)では、外国人を含めた市内に住むすべての人たちとともに生きることが目標に掲げられている。
 その小平市で外国人登録をした人の推移を表8-1に示した。市制施行の頃から二〇世紀をとおして、小平の在日外国人は、七割から九割が韓国籍および朝鮮籍の在日朝鮮人だった。在日朝鮮人の人数のピークは一九九五(平成七)年で二三四九人を数えている。三多摩でみると、一九六二年に在日朝鮮人がもっとも多かったのは調布市であり、小平市の八六八人は調布市に次ぐ人数だった。一九九〇年の小平市の在日朝鮮人二一〇二人は、三多摩でもっとも多かった。朝鮮大学校が存在することで、小平には在日朝鮮人が多く集まったのだと思われる。小平市の在日外国人は二一世紀以降も増加している。二一世紀に入ってからとくに増えているのは中国籍の人であり、その結果、二〇一〇年の小平市における在日外国人は四二七三人にまで増えている。
表8-1 小平市における在日外国人数
人(%)
年次総数韓国及び朝鮮中国その他
1962.12.31964868(90.0)52(5.4)44(4.6)
1990.12.312,5672102(81.8)209(8.1)256(10.0)
1995.1.13,1252349(75.1)324(10.4)452(14.5)
2000.1.13,1992046(64.0)563(17.6)590(18.4)
2005.1.13,8591885(48.8)963(24.5)1011(26.1)
2010.1.14,2731974(46.2)1225(28.7)1074(25.1)
(出典)『東京都統計年鑑』より作成。

 一九七〇年代の小平市では福祉の運動がひろがり、一九九〇年代以降は福祉の行政も本格化している。これらの取り組みと、『ともに生きるまち小平』の考え方をふまえれば、在日外国人が多く住む小平市では、外国人とともにくらすまちづくりが課題として存在しているように思われる。
 二〇〇六年、朝鮮大学校創立五〇周年記念シンポジウムが朝鮮大学校で開かれた(朝鮮大学校『学報』第七号)。テーマは、「『地域社会と世界』から見た朝鮮大学校の五〇年と未来」であり、地域社会にかかわっている三人が登壇した。一人目は、第六章第四節2で紹介した久慈正一であり、久慈は「私と朝鮮大学校」と題して朝鮮大学校とのかかわりを縷々(るる)話した。そのなかで、国際連帯というのは、「何か遠くの方の国際的な連帯ではなく、身近なところ、一番近いところの連帯、身近なところの信頼、それこそが非常に重要」だと述べ、「朝鮮大学校の今日に至る営為とその発展」のなかに身近な連帯の例があると述べた。
 ついで登壇したのは、小平ユネスコ協会会長の野崎耕一である。「小平市における国際交流と朝鮮大学校」と題する話のなかで、野崎は、朝鮮大学生との具体的な交流を例示しながら、小平ユネスコ協会が目指しているのは、「Think Globally, Act Locally」であるとして、「私どもがしようとしてますことは」、「他の国から、他の地域からいろいろな考え方を取り入れて、それでわれわれのこれからの社会を創っていこうということが、われわれの仕事です」と述べた。
 二人の話を受けて、朝鮮大学校につとめる〓達洙が「地域住民と朝鮮大学校のネットワークづくり」について話した。朝鮮大学校の地域における活動は三つあり、一つが文化交流で、小平市民まつりをはじめ、近隣の大学や高校の文化祭などで、朝鮮舞踊や朝鮮打楽器の公演などをおこなっている。二つ目は、「地域住民としての義務」を果たすことであり、ごみの分別にモデル地区として取り組んだり、禁煙マナーアップキャンペーンに参加したりした。ここで興味深いのは小平らしい交流がみられることである。朝鮮大学校保育科の学生は、市内の障害者サークル「すくすく」の例会で、毎年ボランティア保育をおこなっていることであり、また朝鮮大学校の学生委員会に属する学生は、KJC(小平上水クリーンズ)に参加し、玉川上水のグリーンロードの自然保護のためのボランティア活動に参加していた。小平を象徴する福祉活動と玉川上水を守る活動に朝鮮大学校の学生もボランティアで参加しているのである。三つ目は大学校の施設の有効活用である。
 ユネスコ協会は全国に三〇〇、東京では一四の支部があり、小平ユネスコ協会は三多摩で初の支部である。二〇〇八年現在、市内の会員は六一名だった。小平ユネスコ協会の活動は四つの柱で成り立っている。玉川上水の文化的遺産を守る活動、ジャズコンサートなどの文化活動、ハングル語講座や在日外国人のための日本語講座などの生涯学習、そして国際交流活動である。国際交流活動は、「国境を越えた交流活動をつうじて相互理解を深める活動」であり、具体的には、朝鮮大学校があり、在日朝鮮人が多い地域の状況を反映して、小平市民まつりで韓国民族料理「チヂミ」を販売したり、韓国ユネスコ順天協会と姉妹提携して日韓生涯学習フォーラムを開いたり、韓国の正月料理を囲む集いの開催、在日外国人留学生との交流会の開催などをおこなっている。
 地域にはさまざまな人びとが住民としてくらすという原点に立てば、外国人を含めた市内に住むすべての人たちとともに生きるまちづくりが二一世紀の課題として存在している。