自治基本条例と小平市制施行五〇周年

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小平市は二〇一二(平成二四)年に市制施行五〇周年を迎えた。この近現代編は市制施行五〇周年を期して発刊される。市制施行五〇周年に先立ち、小平市では、二〇〇九年一二月二二日に小平市自治基本条例が施行された。二〇〇〇年の北海道ニセコ町の「まちづくり条例」を嚆矢(こうし)として、二一世紀に入ると、地方自治体のなかから自治基本条例を定め、今後の地方自治体の道筋を示す動きがあらわれてきた。二〇〇九年現在で一四〇以上の自治体で自治基本条例が制定・施行されている。
 全国の動きとくらべたとき、小平市自治基本条例の作成過程には、二つの大きな特徴があった。一つは、徹底した市民参加で自治基本条例案が作成されたことである。小平市では、市民の公募を経て、二〇〇七年二月に「小平市自治基本条例をつくる市民の会議」がつくられた。市民の会議は骨子案づくりから市民意見交換会、意見を反映した条例案づくりをおこない、二〇〇八年三月、小林正則小平市長に小平市自治基本条例案を提出した。自治基本条例への市民の関与は自治体によって異なるが、小平市では市民参加による議論を軸に条例案を作成した点で、全国でも特色のあるものとなった。二つ目として、条例案は、その後、小平市での検討を経て小平市議会に上程され、審議を経て可決され、小平市自治基本条例が確定された。行政の責任者である小平市と、選挙により市民に信託された市議会の両方で議論され、最終的に確定しているのであり、このことも大事な特徴である。

図8-17 『市民がつくった自治基本条例』

 全一一章三九条からなる小平市自治基本条例は、小平市内に居住する「市民」と、市民および市内で働き、学び、活動する個人および法人、団体を「市民等」に区別し、「参加」「協働」「まちづくり活動」などの観点から、「市民」「市民等」「コミュ二ティ活動」「議会」「市長等」などの基本理念や「権利」「義務」「責務」などについて定めたものである。
 条例には格調高い「前文」があり、冒頭で小平の歴史にふれている。
 私たちのまち「こだいら」は、武蔵野台地のほぼ中央に在り、江戸時代に玉川上水の開通による新田開発によって開け、水と緑豊かなまちになりました。今も玉川上水と野火止用水に囲まれ、武蔵野の自然に恵まれた住宅都市であり、多くの大学を有する学園都市でもあります。
 私たちは、先人が開き、長年培ってきたこのまちの水と緑豊かな環境や文化を守り、持続可能なまちをつくり、次世代へ手渡したいと願います。

 時代の流れをみれば、「新田開発」と現在の「水と緑豊かなまち」の間に近現代編が位置づく。近現代編の主要なテーマであった「開発」「改良」「福祉」の歴史と「くらしを支える仕組み」の歴史をふまえれば、小平は「持続可能なまち」をつくるための歴史的前提を十分にもっている。歴史をふまえた「持続可能なまち」づくりのために、近現代編が活用され役立つことを期待する。
 「前文」には、続いて次の一文がある。
 私たちは、互いの人権を尊重し、違いを認め合い、いのちを大切にする心をはぐくみ、平和の実現に尽くします。

 「改良」から「開発」をへて「福祉」にたどりついた小平の近現代の歴史、一九七〇年代の「くらしを支える仕組み」のなかに福祉と医療と教育がしっかりと位置づけられた小平の歴史は、前文のこの文章と結びつく。一九七〇年代以降の小平では、「互いの人権」や「違いを認め合う」努力が重ねられてきた。その歴史の歩みと「前文」の文章は呼応しあう。近現代編の先に小平市自治基本条例の「前文」があるといっていいだろう。