黒田様
一、弐万四、五千両 土坪積
但、極深キ所ハ壱丈四尺堀ニ付、此節五分通出来
一、生肴ハ至而不足、マグロ・カツヲ・コノシロ之類少々宛有ル。其余アヂボシ・
サバボシ・鶏・アヒル之類ハ多し、何レも風味不レ宜候。米四斗弐升入
弐俵ニ而三歩三朱位【三百文位 五、六百文位】、或ハ壱升百文前後。味噌四百匁ニ而百文也。
其悪味なること御国杯に而ハ食事不二相成一、百川賄ニ候得とも、
食物至而不レ宜、壱汁香之物計。沢庵漬計ハ甚美味なり
蚊・アブ之類居不レ申、宜候得共、百足・トカケ・アリ之類沢山ニ而、
日々夜々ニ出喰つかれ、大ニ困候者も有レ之所、此節ハ段々薄ク
相成、一同安気致し居候。雨ハ降候得ハ、小屋々々甚しく洩り、傘さし掛、
風吹ハ簀の目より灰のこときこミ飛入、誠ニ難渋至極。
只蚊帳不レ用計ハ一ツの御手当と咄し居候
一、御雇人足近国所々より集、此節二千五百人計相成候。此内
江戸黒鍬と申者共ハ働方抜群ニ而、土をかつき行の力、庄内
者共杯中々及ものニあらす。鍬の重壱貫二、三百匁、両人
ニ而壱度かつき土五、六十〆目もかつき候由、其上土ざかし
至而功者成事御座候。壱日壱人賃銀五匁ツヽ、雇頭江渡
切ニ御座候
一、前段之模様に而ハ、当年中出来無二覚束一所、諸家様とも
成就難レ計候所、定杭是迄ハ古堀川形ニ不レ拘、成丈真直ニい
たし可レ申御模様之所、一昨日公義御役人御見廻之上、古堀
川形に準し、且、是迄堀敷十間之所七間と云御調ニ相成、
定杭ハ御打替ニ成候へ共、未夫々被二仰付一候と申ス御逹無レ之
候得共、先安堵いたし候。此通ニ而行候得ハ、先々者六十万人も