106枚目

黒田様
一、弐万四、五千両        土坪積
   但、極深キ所ハ壱丈四尺堀ニ付、此節五分通出来
一、生肴ハ至而不足、マグロ・カツヲ・コノシロ之類少々宛有ル。其余アヂボシ・
  サバボシ・鶏・アヒル之類ハ多し、何レも風味不宜候。米四斗弐升入
  弐俵ニ而三歩三朱位【三百文位 五、六百文位】、或ハ壱升百文前後。味噌四百匁ニ而百文也。
  其悪味なること御国杯に而ハ食事不相成、百川賄ニ候得とも、
  食物至而不宜、壱汁香之物計。沢庵漬計ハ甚美味なり
  蚊・アブ之類居不申、宜候得共、百足・トカケ・アリ之類沢山ニ而、
  日々夜々ニ出喰つかれ、大ニ困候者も有之所、此節ハ段々薄ク
  相成、一同安気致し居候。雨ハ降候得ハ、小屋々々甚しく洩り、傘さし掛、
  風吹ハ簀の目より灰のこときこミ飛入、誠ニ難渋至極。
  只蚊帳不用計ハ一ツの御手当と咄し居候
 
一、御雇人足近国所々より集、此節二千五百人計相成候。此内
  江戸黒鍬と申者共ハ働方抜群ニ而、土をかつき行の力、庄内
  者共杯中々及ものニあらす。鍬の重壱貫二、三百匁、両人
  ニ而壱度かつき土五、六十〆目もかつき候由、其上土ざかし
  至而功者成事御座候。壱日壱人賃銀五匁ツヽ、雇頭江渡
  切ニ御座候
一、前段之模様に而ハ、当年中出来無二覚束一所、諸家様とも
  成就難計候所、定杭是迄ハ古堀川形ニ不拘、成丈真直ニい
  たし可申御模様之所、一昨日公義御役人御見廻之上、古堀
  川形に準し、且、是迄堀敷十間之所七間と云御調ニ相成、
  定杭ハ御打替ニ成候へ共、未夫々被仰付候と申ス御逹無
  候得共、先安堵いたし候。此通ニ而行候得ハ、先々者六十万人も