朝ねむたい目をこすりこすりつつ起きましたが、早や時計は驚
いた事には六時半にも間うぢかくなりければ、いそぎすべて居間
を掃除し、それを終わるや否やただちに食事をなし、少しばか
り休みまして居りましたが、家戸口にて郵便の声いとも勇
ましくきこゆる故、私はいそぎそれを取り開見ましたが、こ
れは私の姉からの手紙にて本当に面白く之れを読み
終り、少し姉供と親しく四方八方の話をなしてありましたに、
急に母よりの命令によりて船場町にまで使にゆきたり、
帰りに役場に行きましたに一本の書面をおこして妾兄
の生死不明とのおことわり、実に私はおどろき堪へず
心中は悲しみにこらへられないけれど、仕方なけれはいそぎ家
に帰りたり、其時はもう御ひるの御飯時にて家
に帰るとすく家人供に食時をなしたり、
それより少し休みまして国語を読み、それより米を
他家に持って参りました、それより少し貴女の栞を見
まして後は、家の敷屋を方付けたり居間を掃
除したりして此日を送りましたのよ
今日はあまりに団子をたくさん食べまして、御な
がぷむぷむふくれまして非常にくるし目に相ひ
ましたから、此後はあまりに大食をなそまひと
大に感激致しました、先づ今日はこれでさよなら
(面白い文章) ※赤字は担任の先生のコメント・講評
(骨肉の間の至情無理ならぬ尤の事である、是が人情の美ある
留書である)(此心なきは人にあらず、萬物の霊と云へない)
(一体幾つ食べたのですか、小食は私の排する処であるが併し
苦しい程食べるのもよくない)
日露戦役記念絵葉書帖 飽海郡会議事堂前の凱旋門