仝二十八日 曇天多雨 木曜日

現代語訳へ


朝、今日も床から出でました時はもう六時十分にな
りまして私は本当に驚きました、それより顏をあらひ
歯をみがき、すぐ朝飯を食べ、此より居間を掃除
す、生糸を一鍋とりましたが私は取る事か下手な
もので御坐ひますから時間がかかりましのに、又本当
に飽きましたけれども仕方ありませむから「忍堪」の二
字を心中に浮び出しまして、之れを取り終りました時は折
りしも十二時にて昼飯をたべました、それより読本を読
みましたが母よりの教へにより屋敷を草摘み、之れを
はき、此の賞品として「じやがたら」薯をもらひました
故、私は之れを料理致しまして家内一同に食べさせました
が、一同より非常に味しとて大に喜ばれましたのよ、此様にし
てある内に私の親友市原うめを様と伊藤きよ江様と
御訪問遊ばされ、それより伊藤の別荘に参り色々
と楽しく遊びまして「ばら」の花一つをもらひまして家へ
帰りました、それから湯に「はいって」夕飯を食べました後、姉
君と姪と共に不動尊に詣り十時半に枕につきました

 
 
 
(練習して上手になるか如何)
 
(此心掛頗るよろしい、何事も此心あれば成功疑ひなし)
 
 
(褒美としては少々其品の気足らぬ様に思へるが)
(併し温な母よりの賜なれば其蔵連る誠は之にこすものはない)
 
 
 
(風流ですネー)
 
 
 



伊藤家別邸(清亀園)