八月五日 晴曇雨三天 金曜日

現代語訳へ


朝五時に目をさましましたが、あまりに目がぱっつりとなりませむ
から、なほも臥戸にありましたが暫時にして起されまし
たが、すぐ様起き出で時計を見ましたが早五時半、
まあおとろひて身体を拭ひ居間を掃除致しまして
朝飯を食しまして髪を結び、母と姉と田舎に行くのを
見送りとして背に姪をおぶして新片町の端まで
送ってまいりまして、母より団子を買うて貰ひまして
家に帰り其団子を食べましたが、姪は之れを私と二人で
食べて、なほも食べたいそーに見えますから、又も姪のせつ
をして又団子をかひに行かせて食べさせましたが、少計
食べまして私かに引こましたから、之れを姉と姪に食
させましたのよ、それより婦美草を少し見てそれより昼
飯をたべました
暫時休息致しまして、それより姉の話を承りて青塚
に桑摘みに行きましたに、かたつむりがたくさむで摘
むのも、いといやで御坐ひましたけれども、いやだと云って
やめれば姪もやめるから仕方なしに摘みましたが、
つひに桑はかごにたぷり、喜びで家に帰ろーと致しましたが
白崎ちよさんの家で千代が見て居りまして、私を休
めとよびますから、私は籠を姪に持たせて家に帰
し私は白崎ちやんの家に寄って見てありましたに、其時は折りしも
軍人のそー式であって、人は続々と白崎ちやん家の前を
通り、実に一時雑とーの巷となりました、それより暫時にして
家に帰り、又姉の命令によりて新片町に使に行きしに、道
にて又と千代子の君と出あひまして、また共に新片町まで
行きて千代ちやんは小豆を買って帰りました、それ
より夜の仕度をととのひ、居間を掃除して此の日は送
りました先づ今日はこれで
さよなら

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(一家和合の美しさ羨しく思はれます)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



明治末期の酒田のお葬式の行列