八月六日 曇り 土曜日

現代語訳へ


朝のほどは日かげ見へにけれど、しばしのまにてやがて
小雨のふり出でしか、御昼刻より次第にはけしく降りま
さり、風さへおそろしく吹きければ一時は物すごき
やうおぼゆ、朝五時半にて臥戸を出で居間を掃
除し身体を洗拭し、それより姪をつれて中町の市に
今日のたなばたの御花を買ひゆきぬ、桃と花とを買
ひて家に帰りしは折しも午前六時四十分、それより
朝飯を食し屋敷を整理して、たなばた竹に短ざく
を付け天の川にあげる馳走を料理致し、それより雨
のいたく降るもかかわらずに、又姪と共に青塚に桑
つみ行きぬ、それより家に帰りて餅をつきて、たな
ばた様に揚げました、それより私かたも一同にて夕
飯を食し臥戸を用意して、それより作文をひかひ
て十時五十五分頃に寝につきたり、今日はこれで
さよなら

上中町(明治末期) 個人所蔵