八月九日 曇天 水曜日

現代語訳へ


昨日は空いとはれて、心も何にとなくはれたる心地せすを、
今日は又々空一面曇りかちなる薄暗き日にして、今や雲をやぶ
りて雨の落つなむと・・・又も五時四十分にて起き出で
居間を掃除し身体を洗拭し以て飯時をなし、それよ
り市原うめを様といともたのもしき我学び屋にぞ
参りける時は折しも八時五十分、早やそこにいたれば吉
野先生の宿にして学校に行くや否や学校に参りたる
由をつげ、暫し裁縫室に入りそれより体操場の「オ
ルガン」をひき、暫くにして又裁縫に来たり而して堀内
ちゃん浅井ちゃん市原ちゃん等に色々と面白き
お話をなし、それより吉野先生と屡しお話をなし、それ
より家にかへり飯時をなした時は三時、それより雑誌を
少し見た、あまりにつかれはててつひにねむりにつけり、
暫時にして呼び起さた、それより居間を掃除し夕飯
を食し臥戸を寝ぬる用意をなし、母より焼ぶりたる
きびを貰ひたり、其味甚だ美味にして古今無比であっ
た、それより孝女白菊の唱歌を歌ひ、其他妾が知れる
唱歌を姉と共に歌ひ、その後種々の話をなして十時頃
に臥戸に入りぬ、もうおそなりましたからもう
これでさよなら